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日 時:2007年11月26(月)~27(火)
場 所:京都大学時計台記念館
主催:京都大学サステイナビリティ・イニシアティブ(KSI)
活動の記録:
シンポジウムは、冒頭の松本紘京都大学理事挨拶、井合進KSI統括ディレクターのKSI紹介及びシンポジウムの目的説明に続き、日本、中国、韓国、ロシア、アメリカ各国からの参加者10名による発表があった。概要以下の通りである。
小島敏郎氏 (環境省地球環境審議官)は、気候変動に対する日本政府の取り組みを解説した。日本政府は現在3つの提案(長期戦略、中期戦略、京都プロトコールの達成)を基本戦略として掲げ、各戦略毎に基本方針を定め取り組んでいる。例えば、中期戦略の中では、日本の役割について「途上国に対する資金メカニズムの構築」及び「エネルギー効率改善へ向けた技術革新への取り組み」を強調しており、また、京都プロトコール達成に関しては、各種国内政策の立案・制定に取り組んでいる。
黒川浩助氏(東京農工大学教授)は、世界における太陽光発電の現状と技術開発の現状、今後の導入率向上へ向けた見通しなどを紹介した。
Jianhua Yan氏(浙江大学教授)は、中国における廃棄物とエネルギー供給の状況を紹介した。
刈屋武昭氏(明治大学教授)は、産業活動に関連したリサイクル資源活用の数理モデルを検討し、日本のビール産業を例にモデル予想に基づいたリサイクル資源活用の実現性を考察した。その結果を踏まえ、リサイクル資源活用を取り巻く日本固有の状況に配慮した政治や行政の取り組みがリサイクル資源活用促進のためには必要であると強調した。
Justin Kitzes氏(Senior Manager, Global Footprint Network)は、サステイナビリティーとは ‘Living well, within the means of nature’ と定義する。その上で、地球環境の持続性を Ecological footprint(= population x consumption per person x Footprint intensity)と Biocapacity(= Area x Bioproductivity)のバランスと考え、各国の持続性を評価したところ、アメリカ全体の活動の持続には地球5個分、日本には2個半分のBiocapacityが必要であるという結果を得た。また、地球1個で分のBiocapacityと各国のEcological footprintの積算をバランスさせるためのシナリオを紹介した。
福士謙介氏(東京大学准教授)は、足尾銅山鉱毒の歴史、現在の汚染水対策とその課題、また足尾銅山を鉱害防止の原点とするための提案を紹介した。
Jeffery Broadbent氏(Associate Professor, University of Minnesota)は、’Putting Science in the Driver’s Seat?: National Politics and Global Sustainability’ と題し、人類は気候変動の状況を科学知識として理解しその重大な結果も予想されているに関わらず、なぜその状況に迅速に対応できないのかという、核心的な疑問を提示し、主として政治プロセス・制度の面からの分析例を紹介した。
Jong-dall Kim氏(Professor, Kyungpook National University)は、「再生可能であること(Renewability)」を持続可能性の中心課題と位置づけ、特に再生可能エネルギーの導入の必要性と方向性を解説した。
一方井誠治氏(京都大学教授)は、日本における温暖化ガス排出削減の取り組み状況をレビューし、過去15年間で排出総量が増加している点から、取り組みは必ずしも成功しているとは言えないことを指摘した。また、日本企業(国内)の温暖化ガス排出対策状況に関する調査研究を紹介し、各企業の自己努力のみでは排出状況の改善に限界があり、政策として目標値の設定、法の整備、明確な期限の設定が必要であろうと主張した。
Igor Bashmakov氏(Executive Director, Center for Energy Efficiency, Russia)は、持続可能なエネルギーへの移行については3つの視点(’three laws’)、すなわち、長期的なエネルギー費用、エネルギー・サービスの質的な向上、エネルギー効率の向上、が必要だとして、それぞれに関する分析を紹介した。
最後に、植田和弘氏(京都大学教授)を司会、Jong-dall Kim氏、Igor Bashmakov氏、小西哲之氏(京都大学教授)をパネリストとする討論が行われた。
全体として、シンポジウム・タイトルの通り「社会制度と技術戦略(特にエネルギー)」を扱う意義深いシンポジウムであったと思われる。
文責 古市剛久
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