日 時:2007年12月6日(木) 17:00~19:00
会 場:大阪大学大学院人間科学研究科(吹田キャンパス) 東館1階 106教室 (参加無料)
ダルフール紛争におけるヒューマンエコロジー: 地域的視点
講師:モハメド・サリ(Mohamed A. R. M. Salih)教授
(Institute of Social Study/University of Leiden)
【要旨】
スーダンのダルフール紛争については、ジェノサイドや大量の難民・国内避難民などについて、すでに多くの議論がなされているが、社会や自然環境に対するインパクトについてはなおざりにされてきた。本講演は、こうしたインパクトに関する予備的な考察である。この紛争は、民族・政治的紛争の様相を呈するが、その根本原因をより深く理解するには、資源をめぐる新旧の紛争が現在どうからまりあっているかを見極めることが肝要である。環境的要因の考察は、国家の政策や、社会経済的不平等の問題と切り離すことはできない。
ダルフール地方において、人間と環境との関係は、「家」や「故郷」を意味し、民族名の接頭辞としても使われるdarという流動的な概念によってより複雑なものになっている。darは地域の境界と民族のアイデンティティを示すものであるはずだが、現実にはdarと民族は、一対一で対応していない。したがって、アラブ系集団が、いわゆるアフリカ人居住地帯に居住し、アフリカ系集団が、アラブ系の地域に居住していることになる。本講演では、ダルフール紛争の人間生態学を、国家の干渉と、国家、資源、国家人事の支配をめぐるエリート間の競争によって悪化した、資源をめぐる争いとして論じる。したがって、エリートたちにしかるべき地位とポストを配分するだけでは、この紛争は解決しないのである。
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