【報告1】
報告者:久保慶一(早稲田大学・助手)
報告タイトル:コソボにおける民族紛争と紛争後の「国家」建設
コソボ暫定自治政府による独立宣言を間近に控え、コソボ情勢が注目されている。コソボにおける民族紛争と紛争後の「国家」建設は、国内要因と国際的要因が複雑に絡み合い、両者の相互関係をみることなくしては十分に理解することができない。本報告では、1990代後半の民族紛争の勃発と、紛争後の「国家」建設に焦点を絞り、国内要因と国際的要因の連関を分析することを試みたい。導入としてコソボ紛争の歴史的背景を簡単に振り返った後、報告の前半では、1997~1998年にコソボ紛争が武力紛争化し、1999 年のNATO空爆に至った過程を考察対象とし、比較政治学における民族紛争・内戦研究の成果を土台として、紛争の勃発と拡大をもたらした国内要因と国際要因について分析する。後半では、紛争後の平和構築と「国家」建設をとりあげ、コソボにおいて国連コソボ暫定統治ミッション(UNMIK)統治下で進められてきた「国家」建設の功績と問題点を考察する。最後に、コソボという新たな「国民国家(民族国家)」の独立がバルカン地域の政治的安定と今後の国際政治についてどのような示唆を与えているかを考察して、報告の締めくくりとしたい。
【報告2】
報告者:末近浩太(立命館大学・准教授)
報告タイトル:中東政治研究における国民国家・ナショナリズム・宗教中東政治研究は、ラテンアメリカや東南アジアの研究と比較してみれば、社会科学の理論の発展に対して大きく貢献してきたとは言い難い。その主な理由として、同研究における地域研究と社会科学(特に政治学や国際関係学)との乖離が指摘されてきた。両者の融合が進まないのは、突き詰めてみれば、中東を構成する国家群をいかにとらえるか、という方法論上の根本的な問題が未解決のためである(これは、地域とは何か、という問いと表裏一体である)。そして、この問題は、汎ナショナリズムの台頭や宗教復興のうねりといった時代環境の変化のなかで、常に新たな意味づけがなされてきた。本報告では、現代の中東政治研究における国家と地域の実態について、国民国家、ナショナリズム、宗教をキーワードに再考する。なお、事例として東アラブ諸国を取りあげる。
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