【「ハイパー・モビリティ社会」研究プロジェクト】
古代以来、政治的支配にとって、人の移動は、その根幹を揺るがすものとして問題視される傾向にあった。特に、領域支配を行う近代国民国家では、移動して暮らす人々は、「異物」とみなされる。それ故、彼/彼女らの多くは蔑視されてきた。この枠組みの中では、人の移動を社会の基本原理と考えるパラダイムの形成は困難であった。だが今日、コミュニケーション技術の発達は「空間の圧縮」をもたらし、グローバルな「ハイパー・モビリティ社会」が実現しつつある。
今後100年の科学・技術の一層の発展を視野に収めれば、生存基盤の確保と拡大を求める現生人類の移動への志向が、加速度的に進むことは確実である。この展望を踏まえて、本研究プロジェクトでは、生存基盤の持続と人の移動との関連について根本的に再検討している。その結果、先史人類のグローバルな拡散に見られるように、移動を人類の本質と捉えるホモ・モビリタス(移動するヒト)の考え方に到達した。本プロジェクトでは、この仮説を前提とした社会モデルの構築と研究パラダイムの提示を目指している。
そこで、第1回セミナーでは、フィリピンとオセアニアにおける人の移動と社会関係についての事例研究を中心に、ハイパー・モビリティ社会について検討する。
プログラム: | |
1:30~1:45 | 趣旨説明 細田尚美(京都大学) |
1:45~2:45 | 「フィリピンにおけるサパララン・モデルの地域間比較: 『ハイパー・モビリティ社会』研究・序説」 石橋誠・小張順弘・渡邉暁子・細田尚美 |
2:45~3:00 | 休憩 |
3:00~3:45 | 「フィリピン・パラワン族の土地問題(仮題)」 森谷裕美子(九州産業大学) |
3:45~4:30 | 「シューカンから抜け出す方法? ―パラオにおける国際人口移動と贈与交換の再編」 飯高伸五(東京都立大学大学院) |
4:30~4:45 | 休憩 |
4:45~5:00 | コメント 田中耕司(京都大学) |
5:00~5:15 | コメント スヘー・バトトルガ(愛知県立大学) |
5:15~5:45 | ディスカッション |
サイト管理者はコメントに関する責任を負いません。