日 時:2008年5月26日(月) 10:30~12:00
場 所:地域研究統合情報センター3階 会議室
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/index.php/access
【活動の記録】
ジャレドダイアモンドを読む会の第一回研究会となる今回は、「文明崩壊」全編の構成の簡潔な紹介を行うとともに、ダイアモンドの主張がG-COEの課題とどのように関連するか、基本的な考察を行った。
「文明崩壊」の中でダイアモンドは社会が崩壊する要因を、環境破壊、気候変動、敵対集団の存在、友好集団からの援助の減少、不適切な社会制度・文化的価値観の5つに集約し、過去・現代の社会がそれらの要因のいずれによっていかに崩壊に至らしめられたか、あるいはいかにそれらの要因を排することに成功し、存続し得たかを列挙していく。これらの事例を通じて、5つの要因のうち気候変動は、常に決定的崩壊要因となるわけではないが、環境破壊等によって脆弱化した社会にとってはとどめの一撃となることが示され、また、ある場所で育まれた文化が他所の自然環境への適応を妨げ、環境を破壊して社会を崩壊に至らせる可能性が指摘される。最終章で提示される人類社会が持続するための様々な方向性の骨子は、たとえ文化的価値観を大きく変えることになろうとも環境保護的な価値観、政策へシフトすることが必要であり、技術革新がすべての問題を解決することは望めないということである。
G-COEの課題である「生存基盤の持続的発展」のための条件を「文明崩壊」に沿って解釈すれば、まず、現状(気候条件等)において社会が持続的であること―これは産業(農鉱工業)が環境破壊的(収奪的)ではないことなどを意味する―、次に社会が気候変動に対して柔軟であること、さらにそれらを実現(採用)しうる社会制度を持つことであると言える。ここで、社会が気候変動に対して柔軟性を持つためには生存基盤固定型と生存基盤確保型の2通りが想定される。前者はあらかじめ気候変動に対して強靭な社会を構築しておくことであり、人口を食糧生産基盤から見て十分余裕のある水準に抑制し、あるいは逆に食糧生産基盤を工学的に整備しておくことが相当する.また後者は,社会間ネットワークを構築することで危急の事態に備えたり、危急の自体には既存の価値観を捨てて柔軟に対応したりすることが相当する。
これに対して参加者からは、人類社会存続のための方策としての価値観の変更と技術革新をそれぞれ別個のものとして切り離して考えるのではなく、一体化して進めるべき不可分のものとして考えることが必要ではないか等の意見が出された。
(文責 星川圭介)
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