日 時:2008年7月14日(月) 16:00~18:00
場 所:京都大学東南アジア研究所東棟2階セミナー室(E207)
講演者:
岡田憲夫(京都大学防災研究所)
「社会基盤創生とその持続的なマネジメント: 計画論的アプローチ」
コメンテーター:
趣旨:
グローバル化の進展のなかで、グローバルな現象とローカルな現象が複雑に絡まり合い、その結果として諸社会が抱える不確実性も高まりつつある。災害のもたらす被害が世界規模でみた場合に年々大きくなっていることもその一例として挙げられる。
災害において被害を受ける人々は、明らかに地域社会で暮らす弱者である。しかし、彼らの生活の安全・安心を脅かしているのは異常なグローバルな自然現象、および人間の社会・システム・心理等との複合的な要因である。この複雑に入り組んだ原因と結果を解きほぐし、私たちの目の前に居る人々を助けるためには、従来の、個別の問題対応型のリスクマネジメントという枠組みで対応するのではなく、むしろ生存に関わる多様な側面を考慮に入れながら、よりよい対応を考えていくような新たな枠組みを探っていく必要があるのではないだろうか。
本研究会では災害リスク研究の最新の取り組みに対し、文理融合型のマネジメントを深化させる方向で、グローバルな自然と地域社会・在来知という両面から考察を加える。
【活動の記録】
21世紀型リスクとは複雑化したリスクであり,新種の疫病の蔓延,ナノテクノロジーが引き起こすリスクなど不十分な知識の中で対策を練らなければいけないリスクである.そこで土木計画学で培われてきた計画システム論を元に,災害および様々なリスクマネジメントの手法を紹介する.なかでも災害は一定の閾値を超えた現象であり,大地震などは人間のライフサイクルを超えた周期で起こるLow frequency and High impactな減少である.多様な不確実性やリスクの下での持続的なマネジメントという視点から,防災を成長と合わせて都市地域を考える必要がある.例えば東南アジアでは災害が多いことから,生き残るためだけの目的でなく災害をopportunityとして捉えるIntegrate disaster risk managementが必要であるといえる. 社会を構成する多層的なシステムは,見えない時空間(意識,習慣など)から見える時空間(建築構造物,法整備など)まで入れ籠構造を持っている.例えば質の高い社会整備を行うためには,近接分野であるエンジニアリングと法整備を理解する必要がある.特に旧来は災害がローカルだけに起こりマネジメントするだけであったが,現在では社会が様々な広がりを持つようになり複雑性を増しつつある.より安定している社会を目指すには,ローカル,コミュニテイー,エージェントの重要性を認識し,多様な人材を同じ土俵に上げる必要がある.そして現実社会の証明・予測を行うためには,少しやり始めてようすをみる Implementation scienceが重要であり,さらにはやりながら社会的になりたつ社会的成立解を目指すAdaptive management も重要であるといえる.
(文責 甲山治)
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