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「自立・連帯・生存」(イニシアティブ4 研究会)

日 時:2008年7月26日(土) 14:00~18:00
場 所:京都大学・吉田南構内・総合人間学部棟1102講義室
会場までの道のりは、以下のアクセス・マップをご覧下さい。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_ys.htm

 

【共催】
京都人類学研究会
 
 【タイトル】
自立・連帯・生存
~ネオ・リベラリズム時代の「貧困」をめぐる社会学と人類学の対話~

【シンポジウムの趣旨】
ネオ・リベラリズムが推し進めてきた自立化/個人化は、世界的な労働力の流動性を高める一方で、不安定な雇用によるあらたな貧困層を生みだしている。この現代的状況における「生存」という問題を社会学と人類学の対話を通して考える。とくに日本の文脈で強調されてきた「自立化=自己責任」の諸相を、他地域の事例から相対化する。「自立と連帯」/「個人と共同体」という枠組みをこえて、現代の生存を支える基盤を問いなおす。

【プログラム】
14:00~14:30 平井秀幸(日本学術振興会特別研究員)
ネオリベラリズムから<社会的なもの>の再考/再興へ
―「ポリリズムとしてのネオリベラリズム」への抵抗に向けて

14:30~15:10 居郷至伸(横浜国立大学 大学教育総合センター)
日本のコンビニエンスストア
―個人化と搾取のメカニズム、および打開に向けた手がかり

15:10~15:50 仁平典宏(日本学術振興会特別研究員)
現代日本における「ホームレス」の生と構造―自立と連帯のあいだ

(休憩)

16:00~16:40 森田良成(大阪大学 人間科学研究科)
「怠け者」たちの労働と生存―西ティモールの廃品回収人の事例

16:40~17:20 小川さやか(日本学術振興会特別研究員)
都市社会を生き抜く騙しの技法
―タンザニアの零細商人の生計実践と仲間関係を事例に

17:20~18:00 コメント・総合討論 
コメンテーター:春日直樹(大阪大学)・山北輝裕(関西学院大学)

【要旨】
◇平井秀幸(日本学術振興会特別研究員)
ネオリベラリズムから<社会的なもの>の再考/再興へ
―「ポリリズムとしてのネオリベラリズム」への抵抗に向けて

本発表は、ネオリベラリズムと現代社会の関連性をめぐる社会学者と人類学者の対話に向けた「土俵作り」の任を担うものである。当日は、(1)「ネオリベラリズムとは何か」をめぐる錯綜した議論を報告者なりに解きほぐし、(2)ネオリベラリズム=複奏的な統治的合理性との理解を提示した後、(3)幾つかの鍵概念を手がかりに現代日本社会とネオリベラリズムの関係性を探り、(4)最後に「抵抗」の規範的ビジョンをやや大胆に提起してみたい。

◇居郷至伸(横浜国立大学 大学教育総合センター)
日本のコンビニエンスストア
―個人化と搾取のメカニズム、および打開に向けた手がかり

本発表では、中小小売商業をとりまく生存競争の中から生成・発展してきた日本のコンビニエンスストアを取り上げる。統計・文献資料、発表者が行った店主へのヒアリング調査データをもとに、本部の加盟店主としてのアントレプレナーシップの発揮が、やりがいの確保と同時に搾取構造を温存させていることを提示する。この問題を打破する試みとして、本部との利益分配や負担区分の取り決めにあるカラクリを暴く店主の発話に着目する。

◇仁平典宏(日本学術振興会特別研究員)
現代日本における「ホームレス」の生と構造―自立と連帯のあいだ

「豊かな」と形容される日本の都市のただ中で増殖している「ホームレス状態」の生。そこに見られる「貧困」の質は、「日本型」福祉システムと、その「ネオリベラリズム」的再編の陥穽を、端的に照射しているように思われる。報告では、1990年代以降の「ホームレス問題」の構造変容について検討しつつ、そこで問題解決のキーワードとして示される「自立」「連帯」などの機制と射程について問い直していきたい。

◇森田良成(大阪大学 人間科学研究科)
「怠け者」たちの労働と生存―西ティモールの廃品回収人の事例

西ティモールの町に、廃品回収業に従事する「アナ・ボトル」たちがいる。僻地の農村から出稼ぎにやってきた彼らは、集めた廃品を親方に売ることで現金を得ている。都市下層における低賃金で取替え可能なフレキシブルな労働力であると同時に、彼らは労働の価値や倫理を親方たちと共有することのできない「怠け者」でありつづけている。アナ・ボトルの日々の労働において現れる複数の価値の重なりとズレに注目し、市場経済の周辺部における生存のあり方を検討する。

◇小川さやか(日本学術振興会特別研究員)
都市社会を生き抜く騙しの技法
―タンザニアの零細商人の生計実践と仲間関係を事例に

タンザニアの零細商人たちは、自身の身体的・性格的な特性を生かした独自のスタイルを確立し、そのスタイルに適した「騙しの技法」を培うことで都市での「自立的な生存」を模索している。発表では古着商人たちの「生きやすさ」と「葛藤」をかれらの経済活動のしくみと仲間とのつながり方から考察することを通して、合法的/合理的/倫理的な「正しさ」からはみでる人間の過剰さを基盤とした生存の在り方を考える。

【備考】
*事前の参加予約は必要ありません。
*当日は、資料代として200円をいただきます。
*京都人類学研究会は、京都を中心とする関西の人類学および関連分野に関心をもつ大学院生・研究者がその研究成果を報告する場です。どなたでも自由に参加いただけます。


松村圭一郎(7月季節例会担当)
清水展(京都人類学研究会代表)







【活動の記録】

本研究会は、ネオ・リベラリズムのすすめる自立化=個人化によってあらたな貧困層が生みだされている状況において、「生存」という問題を社会学と人類学の対話を通して考えることを目的として開催された。

平井研究員は、ネオ・リベラリズムについての議論をまとめたうえで、この用語のもとで保守派・革新派それぞれ複数の議論が並存していることを指摘し、保守主義と左派の“双方”の議論から、絶対化と幻影化から離れた「ネオ・リベラリズム」理解を目指す必要性を示した。
 
居郷氏は、ネオ・リベラリズム的な就業組織として典型的な例であるコンビニエンス・ストアの流通システムに注目し、フランチャイズの価格設定・ロイヤリティ算定の制度が、廃棄ロスや天候など不確定な要素を本部が加盟店に巧妙に負わせている実態をあきらかにした。
 
仁平研究員は、日本型福祉社会のあり方を1960年代以降の歴史的な文脈のなかに位置づけたうえで、日本のホームレスに90年代以降、新しいホームレスのかたちが生じていることを示した。また近年のホームレスに対する「自立支援対策」のあり方を批判的に検討し、「自立」という言葉に含まれる抑圧的な生の統治をあきらかにした。
 
森田氏は、西ティモールの廃品回収に従事する人びとに注目し、彼らの生計や消費への姿勢が計算的な合理性からは理解できないことを示した。それは仁平が示した「自立」の要求とは相容れない受動的な「待ち」の生のかたちであり、日本における自立化=個人化の異様さを浮かび上がらせた。
 
小川研究員は、タンザニアの路上古着商人の商売や人間関係のあり方を豊富な資料から示し、農村から出てきた若者たちによって構成される都市の社会関係が濃密で密着した関係でも、切り離された個人でもなく、「だまし」や「裏切り」を駆使しながらも、それを期待・許容する緩やかな社会的基盤が構築されていることを示した。
 
コメンテーターの山北氏は、社会学が問題提起型の発表になっているのに対し、人類学が対象の肯定的な側面を強調していることを指摘したうえで、人類学の肯定的に描いた世界がどのような社会的状況や政策的背景のなかで存立しているかを問うた。さらに、春日氏は、社会学と人類学の対話によって、互いの限界や新しい可能性がみえたことを積極的に評価したうえで、問題の個人化でも、統治的な連帯でもなく、あえて夢想や虚無といった境地に肯定的な視線を向けることを提起した。
 
各発表と議論をとおして、「生存」の多様な諸相が浮き彫りにされ、統治的な手法にとらわれないアプローチの必要性が提起された。

(文責 松村圭一郎)

 

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