日 時:2008年10月17日(金) 18:00開場 (18:30 開始)
場 所:京都大学 総合研究棟2号館(旧工学部4号館)4階会議室(AA447)
会場までの道のりは、以下のアクセス・マップをご覧下さい。
アクセスマップ:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja
【演題】
見えないもののリアリティ:タイのピー信仰へのアプローチ
【発表者】
津村文彦氏(福井県立大学学術教養センター講師)
【コメンテーター】
山田孝子氏(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
【要旨】
東北タイ村落の呪術師のもとに、「悪霊(ピーポープ)に取り憑かれた」とされる若い女性が連れてこられた。呪術師によると、その悪霊は隣の村に住む老婆から発生したものだという。それを聞いた村人は「女性の夫が老婆の村に博打によく出かけていた」、「老婆は国道脇の土地を売って最近大金を手に入れたらしい」などと語り合う。
この状況を目の前にした文化人類学者は、しばしば機能主義的に、あるいは象徴論的に、悪霊をめぐる〈社会的現象〉を分析する。「伝統的慣習」の維持に機能するものとして、あるいは外部から侵入する「近代」・「貨幣」を表象するものとして、悪霊をめぐる信仰を解釈する。しかし、「モラルの維持」や「社会的紐帯の強化」をキーワードにした機能主義的/象徴論的な視角は、ある程度の切れ味を見せながらも、悪霊の本質には決して届かないのではないだろうか。本発表で、古典的な文化人類学的手法への懐疑を出発点としながら、悪霊という超自然的存在を理解する際のもう一つのアプローチを探る試みを示したい。
対象とするのは、タイ東北部におけるピー phii と呼ばれる精霊であり、そのピーについての様々な語りである。タイ王国の宗教複合のひとつとして数え上げられることの多いピー信仰は、守護霊祭祀を通じた社会構造との関連性や、上座部仏教との関係に注目されて、これまでの研究が蓄積されてきた。だがこうしたアプローチではピーをめぐる現実の重要な部分が充分に掬いきれない。「ピーが社会的含意として別の何かを表している」という説明の位相とは異なったところにある、「目に見えない何かについて恐怖する」というそこに生きる人々の社会的現実が抜け落ちるのである。ピーをめぐる社会的現実を支えるものは何かを問うことで、ピーという超自然的存在がもつ本質に迫ることが本発表の目指すところである。
【備考】
*事前の参加予約は必要ありません。
*当日は、資料代として200円をいただきます。
*京都人類学研究会は、京都を中心とする関西の人類学および関連分野に関心をもつ大学院生・研究者がその研究成果を報告する場です。どなたでも自由に参加いただけます。
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