京都大学イスラーム地域研究センター(KIAS) ワークショップ(2008/10/18)
日 時:2008年10月18日(土)10:00~17:40
場 所:京都大学本部構内総合研究2号館(旧工学部4号館)4階会議室(AA447)
テーマ:アフガニスタンは今どうなっているのか
言語:日本語
【プログラム】
第一部:9.11以前のアフガニスタン
10:00-10:10 開会のことば:小杉泰(京都大学)
10:10-10:50 発表 1 :
高橋博史(外務省国際情報統括官組織)「タリバーンとは何だったのか?――ムラー・ウマル・ノート――」
10:50-11:30 発表 2 :
樋口征治(中東調査会)「アブダッラー・アッザームとアラブ・ムジャーヒディーン」
11:30-11:40 コーヒー・ブレイク
11:40-12:10 討論
12:10-13:10 昼食
第二部:9.11以降のアフガニスタン
13:10-13:50 発表 3 :田中浩一郎(日本エネルギー経済研究所)
「アフガニスタンの今」
13:50-14:30 発表 4 :井上あえか(就実大学)
「混乱するパキスタン情勢」
14:30-14:40 コーヒーブレイク
14:40-15:20 宮坂直史(防衛大学校)
「米国の対テロ戦争とアフガニスタン」
15:20-16:00 保坂修司(近畿大学)
「カーイダの現状」
16:00-16:10 休憩
16:10-17:30 討論(全員参加)
17:30-17:40 閉会のことば:私市正年(上智大学)
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2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起きました。約3000人の死者を出した、この未曾有のテロ事件の背後には国際テロ組織カーイダ(アルカイダ)がいるとして、同年10月、米英軍は、かれらが根拠地にするアフガニスタンに大規模な武力攻撃を加え、瞬く間に同国を実効支配していたターリバーン政権を瓦解させます。
それから7年。アメリカは2003年には同じ対テロ戦争の枠組でイラクを攻撃、サッダーム・フセイン政権を打倒しました(イラク戦争)。アメリカの開戦理由を信じるならば、ターリバーンとサッダーム・フセインが倒され、世界はよりよ
い方向に向かっていたはずですが、アフガニスタンもイラクも依然として混沌のまま。この両国における米英軍および有志連合軍の死者の数はとっくに9.11の犠牲者数を上回ってしまいました。アフガン人やイラク人の死者にいたってはまともな統計すら存在していません(一番大きな数字としては2007年なかばまでの段階でイラクで約100万人の、戦争を原因とする死者が出たというのがあります)。
猖獗を極めたイラクでのテロは鎮静化したといわれていますが、それはあくまで比較の問題であって、現に今でもイラクでは多くの人たちが戦争の犠牲になっています。一方、アフガニスタンでは、一時期なりをひそめていたターリバーンが復活してきたといわれ、混乱は隣国パキスタンにまで波及しています。また、対テロ戦争の主たる標的であったカーイダの指導者たちはインターネットを中心に宣伝活動を活発に継続しており、それに触発された若いイスラーム教徒たちが世界各地でテロを起こすという現象もみられます。
こうした状況のなか、わが国も対テロ戦争でアメリカに協力する姿勢を示し、具体的には2001年10月に成立した、いわゆるテロ対策特別措置法によって海上自衛隊の補給艦がインド洋に派遣され、また2004年1月にはイラクに陸上自衛隊が派遣されました。対テロ戦争の大義や方法が正しいか正しくないのか、さまざまな議論はありますが、すでに日本はいやおうなしにこの戦いに関与してしまったわけです。
9.11から7年を経過、すでに事件そのものが風化しつつあるなか、2008年8月にはアフガニスタンで活動していた日本人NGOメンバーが何ものかに殺害されました。記憶は風化しても、現実はまったく変わっていないことを、あらためてわれわれに突きつけた事件でした。
テロ対策特別措置法の期限が迫り、ふたたび国会やメディアで議論が行われるでしょう。しかし、現実の政局の動きをみていると、アフガニスタンやイラクがふたたび政争の道具に利用される恐れも出てきています。
この重要な時期に、新たな視点で9.11を問い直し、そのルーツともいうべき、アフガニスタンに再度注目することは大きな意味をもつのではないかと思います。
はたして、われわれはアフガニスタンについて、あるいはカーイダについて、どれほどの知識をもっているのでしょうか。その知識ははたして充分であったのでしょうか。正しかったのでしょうか。誤った情報にもとづき、議論をしたり、政策を立案遂行したりする危険性は、イラク戦争で目の当たりにしたはずです。
上智大学SIAS研究グループ1との共催で開く、今回のワークショップでは、あまり知られていないアフガニスタンの現状を徹底的に議論していきますが、過去と現在のアフガニスタンをアフガニスタンだけでなく、アメリカやパキスタン、さらにアラブの視点からみていくつもりです。それぞれの分野の専門家を集め、学術的な視点だけでなく、より現場に近い生の情報を提供していければと考えています。
保坂修司(近畿大学国際人文科学研究所)
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