Custom Search

Language

Contents

アンケート

本サイトをおとずれた理由

本サイトをおとずれた理由は何ですか?

  •  プログラム概要閲覧
  •  研究会情報
  •  プログラムメンバー
  •  フィールドステーション
  •  報告閲覧
  •  プログラム成果閲覧
  •  写真閲覧
  •  公募
  •  その他
このアンケートにはさらにもう 2 件、質問があります。
結果
他のアンケートを見る | 96 voters | 0 コメント

ログイン

ログイン

「気象気候予測の可能性と限界」 [ 特別研究会 ] (G-COEパラダイム研究会)

日 時:2008年11月4日(火) 17:00~19:00 (その後懇親会あり)
場 所:吉田地区 総合研究2号館 AA447
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_y.htm

講師:東京大学サステナビリティー学連携研究機構 住明正
講演タイトル:「気象気候予測の可能性と限界」

コメンテーター:京都大学地球環境学堂地球環境政策論分野 松下和夫
コメンテーター:京都大学人文科学研究所 田辺明生

【住明正要旨】
気象・気候予測の可能性と限界

住 明正(東大IR3S/TIGS)

(1)「かって、将来の予測は神の業であった」と昔、書いたことがあります。実際、予言や神託という言葉が、宗教には、数多く見られます。人間が知りたい未来の中で、天候が大きな位置を占めていたというのは、人間が自然環境の中で生活せざるを得ない以上、当然のことと思います。

(2)この「神の業」を、科学にしようとしたのが、Richardsonの試みです。文字通り、物理的な法則性に基づいて将来を予測しようとする、大胆な試みです。彼の書いた本を読むと、手計算で数値積分が行えるように定式化が行われています。4年間をかけて計算するなど、彼の努力のすざましさが分かります。

(3)このような予測の確からしさは、昔から、問題になっています。天気予報などでは、現実がすぐに分かるために、「当たる、当たらない」で評価されてきました。つまり、現実で検証したわけです。この「予測と観測による検証」というプロセスは、実験による検証が不可能な地球科学では、ひとつのパラダイムになっています。

(4)数値予報が天気予報の業務に導入されるについて、「予測可能性」の研究が行われました。しかし、今研究は、なかなかと進展しませんでした。なぜかといえば、その背景となる理論が存在しないからです。天気予報は、常に、日食、月食の予測と対比させられてきました。「むこうは、何年も先の予測ができるのにどうして?」というわけです。このような研究の中で、線形系に対する非線形系の振る舞いが取り上げられ、Lorentzのカオスが出てきます。ただ、カオスは、気象の世界では、大きな注目を集めなかったように思います。その理由は、やはり、「将来を当てる」ことを中心に考えているからと思います。

(5)天気予報の分野では、数値予報が完全でないことは自明ですので、それをどのように修正して応用するか?という研究が行われています。予測の限界の理論的解明ということは、あまり、行われていないのが真実です。

(6)結局のところ、予測の可能性に関しては、実際のデータに基づく経験的な議論になっていると思います。実際、予測可能性は一義的に決まるわけではなく、予測する量の定義によって変化するので注意が必要です。

(7)予測可能性を拡張する試みのひとつは、可能性を別のところに求めることです。その一例は、エルニーニョなどの大気海洋結合モデルを用いた年々変動の予測です。その予測可能性の担保は、熱帯地方の大気海洋系のダイナミクスに求められます。現実の気候システムでは、様々な時間スケールの変動が存在します。ですから、より長期の変動モードに着目すれば、微小時間という範囲でも、現実には、予測時間が延びることになります。

(8)地球温暖化に関しても、大気組成によって温度構造がどう決まるか?ということから問題が出発しています。これが、有名な、Manabeさんの1次元放射対流平衡モデルです。ですから、地球温暖化の問題は、最初は、平衡の問題として定義されていたのです。従来の数値積分による温暖化のシミュレーションも、3次元の平衡問題を解く過程と考えるのが妥当だと思います。

(9)これを、transient、時間発展の問題として考えるようになったのは、最近のことです。その背景は、温暖化問題が現実の政治プロセスとなり、具体的な時間軸が重要になってきたからです。初めて、IPCCの第4次報告書で、その可能性が提起されてきました。現在では、季節予報から、30年予測までのシームレス予測ということが言われています。

(10)結局、ここでは、外力による強制応答と、システム固有の自由モードの表現可能性によるとされています。平衡応答が可能と考えているのは、長期に時間積分することによって自由モードの寄与が小さく出来ると考えているからです。ところが、過渡応答を考えると、自由モードの表現が初期値に依存すると考えられるので、その再現可能性が問題になるわけです。

(11)モデルを用いた、もうひとつの特徴は、4次元データ同化システム(4DDA)というコンセプトを提案したことです。時空間に散在したデータを、法則性にのって解析するという手法は、自然科学の分野に新たな光を持ち込んだと思います。


  • 「気象気候予測の可能性と限界」 [ 特別研究会 ] (G-COEパラダイム研究会)
  • 0コメント
  • アカウント登録

サイト管理者はコメントに関する責任を負いません。