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「生存を支える『地域/社会』の再編成」[シンポジウム:イニシアティブ4研究会 合同](若手養成・研究部会 研究会)

>>活動の記録



日 時:2009年1月23-25日
場 所:KKRホテルびわこ http://www.kkrbiwako.com/index.htm

シンポ:生存を支える「地域/社会」の再編成

【要旨】
市場経済化やグローバル化のなかで、われわれの生存を支える「地域/社会」は大きな変容を迫られている。ローカル・コミュニティや地域社会、国家、国際社会、さまざまな「社会的なもの」がひとびとの生活世界に関与する時代にあって、生存の基盤となるべき「地域/社会」をどのようなものとして把握/構想できるのか。若手の地域研究者の事例報告をもとに議論する。

【プログラム】
1月23日(金)

15:00-15:20 シンポ趣旨説明

◇セッション1 市場経済化と空間の再編成
15:20-16:00 西垣有(阪大) 「公共空間をつくる―ポスト社会主義期、モンゴル・ウランバートル市の事例から」
16:00-16:40 細田尚美(東南ア研) 「移動と交歓―フィリピン向都移民の民族誌」
16:40-16:50 休憩 
16:50-17:50 コメント・討論1

18:00-19:30 夕食
19:30-22:00 シンポ参加者の研究紹介1

1月24日(土)

◇セッション2 生存を支える生業/生態環境の動態
9:00-9:40 長倉美予(ASAFAS) 「レソト山岳地の生業とその変遷」
9:40-10:20 鈴木 玲治(生存研ユニット・東南ア研)「ミャンマー・カレンの営む焼畑土地利用の履歴と森林植生の長期的変化」
10:20-10:30 休憩
10:30-11:30 コメント・討論2

11:30-13:00 昼食休憩

◇セッション3 宗教のダイナミズムと地域社会の変容
13:00-13:40 小河久志(総研大) 「「正しいイスラーム」をめぐるポリティクス:タイ南部インド洋津波被災地における宗教実践の変容を事例に」
13:40-14:20 池田昭光(都立大) 「レバノン内戦の記憶に関する予備的考察:宗派という視点」
14:20-15:20 コメント・討論3

15:20-15:40 休憩 

◇セッション4 紛争のなかの生存基盤
15:40-16:20 佐川徹(ASAFAS) 「暴力と歓待の境界:東アフリカ牧畜民による可傷性への対処」
16:20-17:00 久保忠行(神戸大) 「ビルマ:紛争の現代的特徴と難民キャンプの生活世界」
17:00-18:00 コメント・討論4

18:00-19:30 夕食
19:30-22:00 シンポ参加者の研究紹介2

1月25日(日)

◇セッション5 国家の福祉政策と生活世界
9:30-10:10 山北輝裕(関学) 「野宿者にとって<地域福祉>とはなにか」
10:10-10:50 倉田誠(神戸大) 「住民の末端化/主体化の力学:小規模国家サモアにおける保健医療サービスの展開から」 
10:50-11:00 休憩
11:00-12:00 コメント・討論5

12:00-13:00 昼食休憩
13:00-14:30 総合討論

 


 

【活動の記録】
本シンポジウムでは、人類学や地域研究を中心に40名程度の若手研究者が集まり、3日間にわたって、5つのセッションで10の研究発表が行われ、現代社会における地域/社会のあり方の変化に対応するような新しい研究のあり方を目指して、インテンシブな議論が展開された。セッションや懇親会などでの議論を通じて、多様な地域・テーマを扱う研究者が集まりつつも、それを貫いて、まさに「同時代性」とでも言うべき、相互に共有できる状況や問題にそれぞれの研究者が直面していることが明らかになった。
 
初日のセッション1「市場経済化と空間の再編成」では、西垣が急激な市場経済化が進められたモンゴルのウランバートル市における遊牧民のゲル地区の形成とそこでのNGOの活動の相互作用から公共空間が再生していることを指摘し、細田は、フィリピンの農村から都市への移住の経験と呪術世界の変容の関係を示した。討論では、市場経済化があらたな社会空間を生み出している現代的状況について議論が交わされた。
 
2日目のセッション2「生存を支える生業/生態環境の動態」では、長倉がレソト山岳民を対象に、出稼ぎブームの前後の社会変化と彼らの高度差を利用した土地利用との関係を実証的に示し、鈴木がミャンマーの焼畑農耕民が暮らす森林植生の長期変化と近年の政策の影響を指摘した。この二つの報告をもとに、生態環境の動態をいかに政治的な状況との関連のなかに位置づけるか、議論が行われた。そしてセッション3「宗教のダイナミズムと地域社会の変容」では、小河がタイのイスラーム復興運動が地域社会にもたらした軋轢や葛藤を示し、池田はレバノン内戦という文脈における宗教と宗派というカテゴリーをめぐる考察を提示した。セッション4「紛争のなかの生存基盤」では、佐川がエチオピアの牧畜民の戦いと歓待というふたつのモードの転換が戦いの集団性と個人間の社会関係の構築とのあいだで生じていることを論じ、久保がビルマの難民キャンプで繰り広げられるさまざまな援助活動の実態と複数の対立的なアイデンティティの状況について、興味深い議論を展開した。最終日のセッション5「国家の福祉政策と生活世界」では、山北が日本の野宿者を含みこむようなコミュニティ=地域の「福祉」の可能性について議論を展開し、倉田はサモアの保健医療サービスの構築過程が植民者・国家行政・住民の相互作用のなかで展開してきたことを示した。
 
最終日の午後に行われた総合討論では、地域研究が置かれている現代的な状況をふまえ、調査者とローカル社会の価値との倫理的対立をどう乗り越え、それをいかに実践につなげていけるのか、議論を行った。
 
本シンポジウムからは議論の成果として合計8本のワーキングペーパーが生み出されたが、それに加えて関西圏を中心とした若手研究者のネットワークが構築されたという点からも、きわめて実り多いものになったといえる。
 

(松村圭一郎・木村周平)

 


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