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「アグロフォレストリーと土地利用持続性」[ 特別セミナー:パラダイム・イニシアティブ2 合同研究会 ] (イニシアティブ2 研究会)



日 時:2009年2月9日(月) 14:30~17:00
場 所:京都大学東南アジア研究所  稲盛財団記念館3階大会議室

京都大学G-COE 生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点

アグロフォレストリー研究の世界的な権威,P.K. Ramachandran Nair教授の来日に際し,アグロフォレストリーによる持続的土地利用実現の可能性について講演をしていただくことになりました.生物多様性保全,二酸化炭素排出規制,食料と生物資源をめぐる争奪など,簡単には調和点を見出せない諸問題がひしめくこの地球上で,限られた土地をいかに利用していくのか?アグロフォレストリーを題材に,この問題に関する活発な議論の場を提供できれば幸いです.

招待講演者:P. K. Ramachandran Nair (Florida University)
タイトル:Land-Use System Sustainability: Business as Usual? (土地利用の持続性-ビジネス・アズ・ユージャル

コメンテーター:竹田晋也 (京都大学アジアアフリカ地域研究研究科)
Oekan Soekotjo Abdoellah (東南アジア研究所)

演者紹介:
Prof. Dr. P.K. Ramachandran Nair
フロリダ大学 亜熱帯アグロフォレストリーセンター長 インド生まれ.国際アグロフォレストリーセンター(旧称ICRAF)に勤務後,フロリダ大学へ.国際誌Agroforestry
Systemsのチーフエディターや,Advances in
Agroforestryのエディターを歴任.アグロフォレストリー研究のパイオニアとして国際的に高い評価を受け,数々の賞を受賞するとともに,京都大学(2002年授与)など4つの名誉博士号を授与されている.京都大学には,2000年,農学研究科の招へい教授としても滞在.

詳細についてのご質問はオーガナイザーまで
篠原(生存研)
神崎(農学研究科)


【活動の記録】

Nair氏は複合的な土地利用としてのアグロフォレストリーが持つ潜在的な能力,耕地の劣化を防ぎ,炭素蓄積量を増やし,あるいは作物生産の持続性を保障するといった能力をこの講演の中で具体的に示そうとした.作物と樹木の組み合わせのもたらす相乗的な効果を数多くの具体例をあげて紹介してくれた.さらにアグロフォレストリー農地のもつ環境サービスの一例として,炭素隔離能力についての彼らの最近の研究成果を紹介してくれた.彼は,アグロフォレストリーのような複合的な土地利用が,生産者ならびに環境に多くの利益をもたらすということが,ここ30年ほどの間に徐々に浸透してきたことを指摘した.世界が今日直面している食料安全保障や土壌浸食,砂漠化といった問題に対処するためにも,作物と樹木を組み合わせることによる効果をもっと利用すべき時だと強調した.また,農業と林業は別々に扱われてきた.しかし,この二つは実際の土地利用の中では不可分に織りあわされており,多くの共通の目的を有していると主張した.アグロフォレストリーや他の複合的土地利用システムの原理を,実際の土地利用に取り入れる方策を見出すべき時にあり,ビジネス・アズ・ユージャル,既存の枠組みはもはや選択すべき道ではないと結論した.
 

この後,二人のコメンテーターがアグロフォレストリーの別の側面を指摘した.竹田はラオスの焼畑停止政策の中で最近導入されたラックカイガラムシ養殖と組み合わされたアグロフォレストリーを紹介した.彼はこのシステムが成功裏に定着した背景には,中国でのラックの需要増大が背景にあり,経済的な背景がアグロフォレストリーの定着に必須の条件であることを指摘した.
 

Oekan氏は,インドネシアの伝統的なホームガーデンが直面する問題を報告した.農業の商業化は,ジャワ島のホームガーデンのような伝統的な複合的な土地利用を,商品作物の単純な耕地へと置き換えつつあることを紹介し,伝統的な農耕システムが主に経済的な理由により,その存続が危機に瀕しているという現実を強調した.
 

会場からは,アグロフォレストリーの生産性や経済性に対する正の効果が一般化できるのだろうかという疑問が提示された.また,マクロ経済的な分析が必要だという意見も提示された.
 

1970年代から,アグロフォレストリーのポジティブな点は多くの研究者によって指摘されてきながら,熱帯の景観の主要な要素とはなりえていない.しかし,Nairが指摘したように,ビジネス・アズ・ユージャルな農業は,気候変動と持続性といった問題が重要性を増す中で,もはや唯一の選択肢ではあり得ない.第2回の世界アグロフォレストリー会議が今年8月にナイロビで開催される.さらなる複合的な土地利用の発展による持続性確保が期待される.
 

(神崎 護・佐々木綾子)

 

  • 「アグロフォレストリーと土地利用持続性」[ 特別セミナー:パラダイム・イニシアティブ2 合同研究会 ] (イニシアティブ2 研究会)
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