日 時:2009年2月16日(月) 13:00~15:00
場 所:東京ステーションコンファレンス会議室 (東京都千代田区丸の内1 -7-12、サピアタワー5階、JR東京駅八重洲北口2分)
http://www.jebl.co.jp/outline/sapiatower/index.html#access
京都大学G-COE「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」と京都大学イス
ラーム地域研究センターは、立命館アジア太平洋大学、(財)国際貿易投資研究
所と共催で、サウジアラビアからムハンマド・ウマル・チャプラ(Muhammad
Umer Chapra)博士をお招きした講演会を開催します。
講演会タイトル:「世界金融危機とイスラム金融」
基調報告1.「顧客はイスラム金融をどうみているか」 武藤幸治(立命館ア
ジア太平洋大学・教授)
基調報告2.「世界金融危機とイスラム金融」 Dr. Muhammad Umer Chapra
(Senior advisor to Islamic Reseach and Training Institute, Islamic
Developmnt Bank)
使用言語:日・英(同時通訳付き)
入場料:無料(会場の関係で200人まで)
後援:日本経済新聞社、在日サウジアラビア王国大使館
問い合わせ: 京大イスラーム地域研究センター事務局
【活動の記録】
本講演会は、イスラーム経済学およびイスラーム金融研究の分野で世界的に著名なムハンマド・ウマル・チャプラ博士(サウジアラビアのイスラーム開発銀行傘下の研究機関であるイスラーム研究教育機関Islamic Research and Training Institute, IRTIの理事)の来日に合わせて開催された。チャプラ博士は、アメリカの大学で博士号を取得の後、長年にわたってサウジアラビアの中央銀行に相当するサウジアラビア通貨庁(Saudi Arabian Monetary Agency, SAMA)で経済顧問を担当した経験もあることから、イスラーム経済・イスラーム金融の理論・実務の両方に長けており、「世界金融危機とイスラーム金融」という本講演会における講演もそのような長年にわたる理論面における研究と実務での経験を反映した重厚なものとなった。
講演では、まず、在来型金融システムの脆弱性と不安定性の根本的要因を、昨今の金融危機の発信源の1つであるサブプライムローンの特徴とその悪弊を考えることによって明らかにした。そこでは、サブプライムローンに代表される在来型金融において開発されてきた金融商品の多くにおいて、リスクを当事者間でシェアするしくみが欠如していたり、過剰な貸出に陥りかねないスキームとなっていたりしたことで、高いレバレッジや投機的行動、資産価格の高騰を誘発しかねないような構造となっていることが指摘された。その後、イスラーム金融システムの特徴が紹介され、リスクのシェアと実際の財の売買にもとづく信用の供与を大原則とするイスラーム金融システムが、在来型金融システムの立て直しに様々な示唆を与えてくれることが指摘された。
講演会にはイスラーム金融に関心を持つ日本の金融実務家や法律家の多くが参加し、講演の後で行われた質疑応答の場面では核心を突くような議論が交わされた。このことは、日本においてもイスラームの理念にもとづく金融システムが在来型金融システムに対してどのような寄与ができるかについて大きな関心が払われていることを示しているものといえよう。チャプラ博士の講演の前には、立命館アジア太平洋大学の武藤幸治教授による「顧客はイスラーム銀行をどうみているか―アンケート調査の結果から」と題した講演も行われ、イスラーム金融を利用する顧客の視点に立脚した貴重な実証研究の成果が報告された。
(文責 長岡慎介)
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