日 時:2009年6月1日(月) 16:30~18:30
場 所:京都大学川端キャンパス稲森財団記念館3階小会議室Ⅰ
※稲森財団記念館は、川端通沿い(近衛通角)にあります。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_b.htm
要旨:
南アジア地域で広く知られている慣行では、不妊であることはある種の「異常事態」だとみなされ、憐憫の対象になると同時に、邪視・呪術との関与に対する嫌疑がかけられたり、吉祥な儀礼や行事からの社会的排除が行われたりすることが多い。特に婚姻ののち長い年月がたっても妊娠しない女性にとっては、不妊であることは、離婚や別居、夫の複婚といった婚姻関係の再編制を促す契機ともなりうるものである。ここでの問題は、不妊という現象が、共同性を帯びたものであり、個人をある特定のつながりから排除したり、あるいは、ある特定の仕方でのみ世界とつながるようにさせる力学が働いているということである。本発表では、インド・マハーラーシュトラ州村落における不妊を事例として、生存基盤としてのつながりについて考察する。具体的には、発表者の調査地において不妊と深く関わる「月経」と「流産」をめぐる人々の語りと実践を検討する。それにより、村落社会の規範的なライフコースからは逸脱する周縁者としての不妊女性が、婚家や近隣社会において、いかにして「つながり」を模索しようとするのか、また、自己と世界との間でどのように微細な調律(チューニング・アップ)を試みるのか、ということを論じるものである。
報告2「社会化と社会変容―クン・サンにおける子どもの歌/踊り活動の分析から」
高田明(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)
要旨:
今回の発表では,子どもの社会化と社会変容がどのようにして両立しうるのかを考えたい.南部アフリカの先住民として知られるクン・サンでは,多年齢からなる子ども集団が子どもの社会化に重要な働きを担っている.近年では定住化の影響で離乳が早まり,1,2歳児もふだん共住する年長児にケアされながら子ども集団の活動に参加するようになっている.子ども集団の活動においては,歌/踊りがとりわけ重要である.歌/踊りの音楽性に助けられて,1,2歳児も集団活動に参加することができる.歌/踊りでは,可視的な他民族や大人の文化が創造力の源となっている.一方でこれらの活動はたいてい他民族や大人の監視の外で行われている.このため,年長児が活動のイニシアティブをとることが可能になっている.クン・サンにおけるこうした子ども集団活動は,社会変化を推進し,さらには社会を再統合する力を持っている.
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