京都大学アフリカ地域研究資料センター
第154回アフリカ地域研究会のご案内
日 時:2009年6月18日(木)14:30 ~ 17:30
場 所:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
稲盛財団記念館3階中会議室(京都市左京区吉田下阿達町46)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_b.htm
演題1:「紛争はどのように波及するのか-第二次リベリア内戦に参加した
シエラレオネ人の事例から」
講師1:岡野英之(大阪大学大学院人間科学研究科博士課程)
要旨1:武力紛争、特に内戦の考察において、紛争の隣国への波及はひとつの
イシューとして取り上げられている。本来、国内勢力間での闘争であるはずの
紛争は容易に国境を越え、隣国においても不安定化をもたらしている。特に、
アフリカにおける武力紛争では、国内周縁部を支配する武装勢力が隣国に活動
拠点を置いたり、物資の運搬に隣国を利用したりするため、戦略的な重要性を
帯びている。しかし、紛争の越境プロセスを明らかにしようとするこれまでの
研究はこの現象にたいして部分的にしか取り組んでこなかった。そのような研
究は、武装勢力のリーダー層の行動や、彼らの国境を越えての協力関係といっ
た武装組織の上層部の動きを明らかにしてきたが、普通の兵士がなぜ、どのよ
うに移動するのかについては考えてはこなかった。しかし、この作業は、紛争
の越境を説明するためには不可欠である。
本発表では、リベリア第二次内戦の勃発を事例に、シエラレオネ紛争にCDF
(the Civil Defense Force)として参加した兵士が、どのように、なぜリベリアの
武装勢力であるLURD (Liberians United for Reconciliation and Democracy)に
参加したのかを明らかにする。この考察は、発表者が2008年10月にリベリアの
首都モンロビアにおいてシエラレオネ人元兵士に対して行ったインタビュー調査に
基づくものである。本発表は、発表者が行ったフィールドワークを、文献調査に
よって得られたCDFやLURDの形成や特徴と照らし合わせることによって第二次
リベリア内戦ぼっ発のメカニズムの理解を試みたい。
演題2:「北部ウガンダ紛争と国際刑事裁判所-『アチョリの伝統的正義』
言説をつうじて」
講師2:榎本珠良(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
要旨2:2003年、国際刑事裁判所(International Criminal Court、以下ICC)が
正式発足した。以後、ICCが捜査や訴追の段階に至った事態はアフリカに集中して
おり、発足後6年間のICCの活動は、アフリカでの犯罪への対処をつうじた「不処
罰の防止」、「法の支配の確立」、「平和構築」の取り組みとして論じられてきた
といっても過言ではない。報告者の調査地の北部ウガンダについても、ICC初の
ケースとして、北部ウガンダの人々に正義をもたらし、犯罪を予防し、「平和構築」
に資することが期待された。
そうした一方で、ICCは各事態において様々な問題に直面してきた。北部ウガン
ダについても、ICC関与以降の経緯は複雑であり、他の事態でも指摘されることが
ある「平和と正義」の問題やローカルな「正義」とICCとの関係の問題などが噴出
した。
本報告は、北部ウガンダ紛争とICC関与の経緯を概観し、最大の論点の一つで
ある「アチョリの伝統的正義(以下、伝統的正義)」をめぐる言説とその解釈を再考
する。そして、特定の「伝統的正義」言説と解釈が形成された歴史的背景を探る
作業を通じ、北部ウガンダの事態に関する議論が、アチョリ地域内外の多様な主
体の間で、複数の認識枠組みや社会秩序構想が交錯しながら展開したことを指摘
する。その上で、「伝統的正義」の言説および解釈が、ICC関与後の議論および
紛争の展開にどのような影響を与えたのかを考察する。
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この研究会は「アフリカ在来知研究会」と「紛争・難民・平和研究会」との共催です。