日 時:2009年7月13日(月) 14:00~15:30 → 13:00~14:30
場 所:京都大学川端キャンパス共同棟4階セミナー室
報告:
「ライフ・エシックス:バイオエシックスの人類学的転回を目指して」
岩佐光広(国立民族学博物館 研究戦略センター 機関研究員)
要旨:
バイオエシックス(生命倫理学)は、1960年代にアメリカを中心とした英語圏において成立した、医療をめぐる倫理的問題に取り組む学問・実践領域である。現在この領域は、現代医療における不可欠の領域となったが、その一方で1980年代以降、人文学・社会科学からの批判にさらされてもいる。そこでの議論の焦点とは、西洋哲学を応用した普遍主義に基づく抽象的・演繹的なアプローチの問題性であり、社会文化的多様性に配慮した具体的・帰納的なアプローチの重要性である。この流れの中で人類学もまた、通文化的な視点からの研究に少しずつ着手するようになってきたが、バイオエシックスと有機的な形で議論を展開するための理論的展望は必ずしも見えていない。本発表では、ラオス低地農村部における医療民族誌的調査の知見を取り上げながら、バイオエシックスと人類学それぞれのアプローチを比較検討することを通じて、それぞれの問題点を浮き彫りにするとともに、「生(生命/生存/人生/生活)」に着目した新たな議論の地平を見据えてみたい。