「映像実践による現代宗教復興現象の解明を通じた地域 研究手法の開発」[第八回研究会](関連する学会・研究会)
日 時:2009年07月26日(日) 14:30~18:00
場 所:京都大学東南アジア研究所敷地内・京都大学稲盛財団記
念館2階・京都大学地域研究統合情報センターセミナー室
参加申し込み:religion.visuality[at]gmail.com
※[at]を@に変えてください。
【キーワード】
発表1.Conversion(回心、入信)、人生儀礼、修行、宗教的世界観の体得、宗教多元主義、自己啓発セミナー
発表2.ビデオアート、対抗文化、ニューエイジ、不確定性、神秘主義
【プログラム】
発表・上映
1.「Conversionを語る--宗教的世界観の体得はどのように撮られ表現されるか」
葛西賢太(宗教情報センター)
発表:
三つの映像を取り上げ、宗教的世界観を体得していく過程を観察した三つの映像を取り上げ、映像によってその体得過程がどのように捉えられ表現されるかについて考察したい。Conversion-回心あるいは入信と訳される過程は、宗教的世界観の体得を意味する。そのとき生じているのは単純な教義の学習ではなく、私的な問題の再解釈や社会化やネットワーク作りの過程も同時進行している。人生儀礼や年中行事として、ときには強烈な驚きや厳しい修行を経由して、人々はこの過程を通る。インタビューの撮影や儀礼の撮影が一つの作品になり、外部の他者がこの過程を見られるようになることは、この過程に新しい意味を与える。宗教が多元的に共存する社会の中で、他者に理解を求めるためのメッセージにも用いられるからである。その場合、メッセージは、内部用の記録・記念の映像だけではなく、よりわかりやすいメッセージに置き換えられ、また汎宗教的な性格を帯びることになる。それらの事例として、三つの映像を取り上げる。一つ目の事例は複数宗教の青年が体験する宗教儀礼を並列して多元主義的共存を描く作品であり、二つ目は心理療法的な「セミナー」により多くの人生を「変容」させた人物についての映像とインタビューを織り交ぜた作品であり、三つ目の事例は、葛西の撮影による、東京に住むごく普通の人が関わった、仏像の開眼という出来事を取りあげたものである。
映像:
『不動さんが渋谷にやってきた』2009年、葛西賢太
Robyn Symon, “Transformation: The Life and Legacy of
Werner Erhard
”, 2008.
Salah Feinbloom, “What do you believe?", New Day Films,
2004.
2.「映像技術の中の宗教性-パイクとヴィオラを中心に-」
榎本香織(東京大学人文社会系研究科)
扱う素材やテーマの中からのみではなく、それらを統制する技術的背景からメディアの中の宗教性を探る。ナムジュン・パイクはビデオアートの創始者として有名であるが、彼が映像の中に宗教性を認めたのは、配線や磁力等で意図的に操作する事によってあらわれる映像が、全く予想できないものである事を発見した時である。そこに禅の「不確定性」を見出した所から彼のビデオアートは始まったと言え、物語性の見えない、高速で変化する映像はそれ自体が彼独自の禅解釈であると言える。
ビル・ヴィオラはパイクの元でアシスタントを経験した事もあるビデオ・アーティストであるが、彼が技術面において最も重視をしている一つが徹底したスローモーション撮影である。時間を伸ばすことにより空間を広げ、知覚の速度を上げることで、「いま」という瞬間を体感する可能性をヴィオラは見る側に提示する。そしてそれは単なる知覚レベルでの体感ではなく、禅やキリスト教神秘主義等で言われる所の直接経験を射程としている。
映像:
研究会では両者の作品を数点用意する予定です。その対照的な映像の中に見る宗教性について考察したいと思います。