日 時:2009年12月12日(土)13:30~17:30
会 場:京都大学稲盛記念会館3階 中会議室
アクセス:http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/about/access_ja.html
建物位置:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_b.htm
報告1 チャン ティ ヒエン(大阪大学大学院言語文化研究科 博士後期課程)
「ベトナム語司法通訳翻訳の問題-日本語の漢語とベトナム語の漢越語の問題を中心に-」
報告2 高村加珠恵 (国立民族学博物館外来研究員)
「国境空間における華人組織とリーダーシップ:タイ・マレーシア国境東部からの一考察」
【発表要旨 Abstracts】
1 チャン ティ ヒエン氏
日本の社会の国際化に伴い、司法通訳翻訳の質の向上が問題となっている。発表者はこれまでに、通訳翻訳の技術上の問題、制度上の問題、倫理的な問題などについて考察してきた。今回の発表では、特に、ベトナム語司法通訳翻訳の技術的な質の向上に関連する日本語の中の漢語とベトナム語の漢越語の問題に焦点を絞って考える。
日本語の漢語とベトナム語の漢越語のかなりの数が、同じ漢字で書かれ、類似した意味を持つ。そして、この類似がベトナム語母語話者の日本語学習においてある程度有利に働くことも知られるようになっている。しかしながら、この類似は、一方で混乱を生むもとにもなっている。
この発表では、まず、司法通訳翻訳で頻繁に使われる語彙を漢字と意味の対応別に整理した結果について考察する。さらに、これらの語彙のうち、漢語と漢越語で対応する漢字が同じ例を取り上げ、特に同形異義語と呼ばれうる語彙について考察する。次に、ベトナム語使用者が属する地理・歴史的な背景によって、漢語と漢越語の対応関係が異なる場合があることについて考察する。最後に、日本の司法通訳翻訳の分野において、本来ベトナム語には存在していない新しい漢越語が作られ、使用されている例について考察する。
以上の考察をもとに、ベトナム語司法通訳翻訳、ひいては、日本の司法通訳翻訳が抱えている問題の一端を示したい。
2 高村加珠恵氏
本発表はタイ・マレーシア国境東部において国境経済形成に関わる華人社会の考察であり、ある特定の国境空間を定点に、華人組織およびリーダーシップ(指導者層)に焦点を当てる。本研究で考察するタイ・マレーシア国境東部の場合、マレームスリムやタイ仏教徒が共存する多民族環境に置かれているだけでなく、華人は経済活動や親戚関係を通して、国境を越えた密接な関係性を持つ。昨今の華人研究ではトランスナショナリズムがしばしば取り上げられているが、越境行為そのものが発生する国境空間から華人社会を考察する視角は十分に検討されてこなかった。また華人組織やその指導者層に焦点を当てた研究については、大都市に展開される組織そのものの政治的機能に焦点が当てられ、地方の末端レベルにおける日常的機能や、華人という枠組みを越えた多民族環境における役割については十分に明らかにされていない。本研究では、国境空間を定点に華人社会内部の力関係だけでなく、国境空間に日常的に展開される民族や国境を越えた跨境的関係性について、華人組織およびリーダーシップという視角を通して理解することを試みる。
世話人・連絡先 Contact:
片岡樹 Tatsuki Kataoka kataoka(at)asafas.kyoto-u.ac.jp
蓮田隆志 Takashi Hasuda hsd(at)cseas.kyoto-u.ac.jp
速水洋子 Yoko Hayami yhayami(at)cseas.kyoto-u.ac.jp