日 時:3月24日(水)13:30~17:00(終了後、懇親会)
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階 小会議室Ⅰ
発表者:
1)山本めゆ(京都大学文学研究科・院生)
「モデル・マ イノリティの20世紀――南アフリカの中国系コミュニティに注目して」
2)牧野久美子(アジア経済研究所)
「年金は誰のため:南アフリカの非拠出年金に関する批判的分析」
3)舩田クラーセンさやか(東京外国語大学)
「東南部アフリカ現代史の可能性を追求する」
※発表・質疑応答をふくめ1人1時間程度です。
【発表者要旨】
発 表者1:山本めゆ
タイトル:モデル・マイノリティの20世紀――南アフリカの中国系コミュニティに注目して
要 旨:現在南アフリカには10,000~12,000人の中国系南ア人が居住しているが、そのコミュニティはアフリカにおける中国系コ ミュニティとしては最も古く、100年以上の歴史をもつ。彼らはアパルトヘイト期にはinvisibleな存在とされてきた が、近年アフリカ各地で中国人の存在感が増すなか、中国系アフリカ人の未来の姿としてにわかに注目を集めるようになった。本発表で は、文献調査をもとにそのコミュニティ史の一端をたどるとともに、彼らの人種/エスニック・アイデンティティの変容につい ても考察を加えたい。
発表者2:牧野久美子
タイトル:年金は誰のため:南アフリカの非拠出年金に関 する批判的分析
要旨:アパルトヘイト体制下で生み出された南アフリカの格差と貧困は、民主化から16年あまり が経過したいまもなお、深刻な問題であり続けている。他方で南アフリカには、途上国としては例外的に大規模な高齢者手当(old age grant)と呼ばれる非拠出年金制度があり、貧困層を中心に高齢者の7割以上が受給している。
南アフリカの非拠出年金の重要な特徴として、世帯全体で共有されることにより、高齢者のみならず、高齢者と同居する家族、と りわけ子どもの貧困軽減に貢献していることが、多くの研究によって指摘されてきた。高齢者手当を含む社会手当(social grant)の貧困軽減効果への認識は、研究者のみならず南アフリカの政策立案者にも広く共有されており、政治家の演説や様々な政策 文書のなかで、社会手当は貧困対策の要として重要な位置を与えられてきた。さらに、南アフリカの高齢者手当は、社会的保護 や貧困削減の観点から、国際的に注目されることも増えている。
南アフリカの非拠出年金の歴史は長く、南アフリカ社会において、この制度はいわば自明視されている。しかし、アパルトヘイ トの歴史があり、現在に至るまで、極端な不平等を特徴とする南アフリカ社会において、貧困層を中心に、これほど多くの高齢 者が非拠出年金を受給しているということは、自明どころか、むしろ驚きである。アパルトヘイト体制下ですら、とくに同体制末期には、非 拠出年金の受給者の大半はアフリカ人であり、富裕な白人から貧しいアフリカ人への財政による再分配という要素があった。さらに、グ ローバリゼーションの進展により、あらゆる国家が直面している新自由主義化圧力にもかかわらず、現在に至るまで、南アフリカの非拠出 年金は維持され、さらには(男性の受給資格開始年齢の引き下げという形で)制度が拡大さえしていることは、いかにして説明 されうるのであろうか。こうした問いを念頭におきつつ、南アフリカの非拠出年金の意義を問い直すことが本報告の課題となる。
発表者3:舩田クラーセンさやか
タイトル:東南部アフリカ現代史の可能性を追求する