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「ウガンダ―民族の辿った道と場」[第168回アフリカ地域研究会](関連する学会・研究会)

京都大学アフリカ地域研究資料センター
第168回アフリカ地域研究会のご案内
 

演題:ウガンダ―民族の辿った道と場

日 時:2010年3月25日(木)13:30 ~ 16:00
場 所:稲盛財団記念館3階330号室(京都市左京区吉田下阿達町46)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_b.htm

ワークショップ「ウガンダ―民族の辿った道と場」
ここ10年間、社会学的アフリカ研究の舞台は、基礎的な文化から流動的なコミュニティ、さらには空間へと変容を見せ始めている。このワークショップの目的は、ウガンダの過渡的な状態にあるコミュニティの検証を通して、この論点に分け入ろうとするものである。この議論は、コミュニティを再定義するにあたってかなり重要なものになるだろう(田原範子)

 

プログラム:
13:30~ 「趣旨説明」(田原範子)
13:40~ 「ソース、場所、そして源泉を追及するなかでの生活世界の変容」
田原範子(四天王寺大学)
14:10~ 「アフリカ研究の方法論再考」
エドワード・キルミラ(マケレレ大学社会科学部)
14:40~ 休憩
14:50~ 総合討論
司会:太田至(京都大学)
コメンテータ:
Isaac K. Nyamongo(ナイロビ大学)
白石壮一郎(関西学院大学)
松田素二(京都大学)

演題1:「ソース、場所、そして源泉を追及するなかでの生活世界の変容」

講師1:田原範子(四天王寺大学・教授)

要約1:アルバート湖の魚、水、そして天然資源は、ブリサ、西ナイル、そしてコンゴ民主主義人民共和国など広い範囲から人びとを引きつける。私はウガンダ・アルバート湖の東に位置する漁業を生業とするコミュニティのひとつ、ルンガにおいて2001年2月から2010年1月までの間、断続的に調査を実施した。ルンガはかつてニョロ王国の中心地だったホイマ県に属し、ニョロ由来のグング人が住んでいる。
1990年代のおわりから、漁業を生業として暮らす機会を求めて移住してきたアルル人が現在では80パーセントを占める。国の漁業政策が漁法や漁業対象を変化させてきた。何人かの請負人(ほとんどが首都カンパラからのガンダ人なのだが)が村にすみつき、2002年から小魚を買い付けている。
ルンガは異民族が接触し、人びとがその生活世界を維持し変容させる共通の場であり、ミクロコスモスである。またきわめて過渡的なコミュニティとしての特徴も観察される。たとえば、アルル人はアビラやジョクなど祖霊を慰撫する儀礼をおこなっていたが、これらの実践はここ何年か船着き場近辺では見られなくなってきている。文化を維持し、吸収する過程において諸民族が自らを再構成しているのだ。
異質性そして言語、経済活動、そして社会的背景の多様性に影響されながら、人びとが生活世界を再構成する際のミクロ・レベルでの戦術を見ていきたい。

 

演題2:「アフリカ研究の方法論再考」

講師2:エドワード・キルミラ(マケレレ大学社会科学部・教授・学部長)

要約2:アフリカ人研究者であるフランシス・ニャムンジョーは、現代のモダニティが交わる状況について、以下のように書いている。人びとの流れ、資本そして財が、グローバル化の力によってこれまでにない速度で国民国家の境界を越えるようになってきている。境界を横断する人びとの身体にとってグローバル化が実感をともなったリアリティとなっているために、国籍や社会性、そして集団への帰属感がストレスにさらされており、表面上のグローバルな過程の底には、さまざまな衝突と絶え間ない変化が潜んでいる(Nyamnjoh, 2006)。そしてアフリカ研究は、理論的にも方法論的にも、岐路に立っていることを次第に自覚するようになってきている。アフリカのコミュニティに関する研究も、その対象を以下のように変えていくことが求められている。すなわち、民族から諸民族へ、コミュニティから空間へ、単一なものからインターフェースの軌跡へと、そしてさらには、こうしたすべての視点を複合させるように要請されている。
人びとは、文化的にも地域的にも、国民国家の境界も国際的な境界も越えて、時空間をゆきつ戻りつ移動している。アフリカ人研究者そしてアフリカを対象とする研究者は、アフリカのコミュニティを調査するとき、相手が自然とのかかわりにおいて漁業、農業や牧畜、いずれを生業にしていても、自分の理論、とりわけ方法論的なアプローチについて再考しなければならない。それゆえに、人びとが生活世界を構成するためにとっているミクロ・レベルの戦術を理解するためには、生活経験がもたらされる空間に意識的にならなければならない。そのためには、あるときは回顧的にあるときは予見的に、それを明らかにする方法論が必要なのである。