日 時:2010年4月26日(月) 16:00 ~ 18:00
場 所:稲盛財団記念館3F 中会議室
発表者:
佐藤孝宏 「第2パラダイム研究会の趣旨と生存基盤指数」
和田泰三 「生存基盤指数をどのように構築するか? Disability Adusted Life Expectancy(DALE)と生活機能評価の視点から」
西真如 「生存基盤指数の可能性:個々人の潜在能力から人格間の関係性へ」
コメンテータ 杉原薫
【要旨】
「第2パラダイム研究会の趣旨と生存基盤指数」
これまで、UNDP(1990)によって提案された人間開発指数をたたき台としながら、本プログラムにおける「地球圏・生命圏・人間圏」という分析枠組みを踏まえ、
生存基盤指数の開発を進めてきた。2年後の指標完成に向けて、「生産から生存へ」「温帯から熱帯へ」といったキーワードをどのように取り込みながら、
指標の開発を進めてゆけばよいのか。本日より始まる第2パラダイム研究会の趣旨と、研究会を通じた生存基盤指数の開発について説明を行う。
「生存基盤指数をどのように構築するか?Disability Adusted Life Expectancy(DALE)と生活機能評価の視点から」
おもに人間開発指数とエコロジカルフットプリントを基本とした改変をするなかで生存基盤指数の構築を試み、生存基盤持続型パラダイム形成に資する視点を重視してきた。
しかしながら生存基盤指数関連要素として可能性のある既存のグローバルデータや、これまで地域研究者が収集してきたローカルデータ双方を概観し、統合する努力はまだ乏しい。
また指数の基本的定義の合意形成も未だ発展途上といえる。本GCOEプログラム後半戦にはいったいま、人間圏関連指数としてとりあげてきた健康指数(DALE)と地域在住者を
対象に評価してきた生活機能評価の視点から今後の生存基盤指数の構築にむけた話題提供をする。
「生存基盤指数の可能性:個々人の潜在能力から人格間の関係性へ」
私たちが生存という問題について考えるとき、ひとつの方法はそれを個人(に備わった能力や属性)と(個々人の生存を保障する)制度に関する問題として理解することである。
しかし、このような理解においては、具体的な他者との関係が、どのように私たちの生存と人 格を支えているかという問題について、じゅうぶんに把握することができない。
本報告では、「個人」と「人格(間の関係性)」とを区別する人類学上の議論、および親密圏的な問題を公共圏に持ち込もうとする政治哲学の議論を踏まえつつ、
他者の生存と人格に対する配慮という視点から、生存基盤指数の可能性について考えたい。従来の人間開発指数 は、個々人の潜在能力を制度へのアクセスという観点から
測ろうとするものであったが、生存基盤指数においてはこの発想を転換して、人格間の関係性に付与された価値を、何らかの方法で「測る」必要があるように思われる。