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「熱帯半乾燥地における生存基盤」[第30回研究会] (G-COEパラダイム研究会)

活動の記録>>

日 時:2010年7月12日(月)  17:00 ~ 19:00
場 所:京都大学東南アジア研究所  稲盛財団記念館3階大会議室

 

テーマ: 「熱帯半乾燥地における生存基盤」
 

報告者:
1. 舟橋和夫 (龍谷大学社会学部)
2. 伊谷樹一 (ASAFASアフリカ専攻)
 

要約:
Reesらによって開発されたエコロジカルフットプリント分析を国・地域に適用する場合、対象空間における生物生産力と生物由来資源消費の収支により、生態学的な持続性を評価する。ここでいう生物生産力は、太陽エネルギーや水資源といった、地球圏由来の物質により規定される純一次生産量に、さまざまな「技術」的要因を加えたものと考えることができる。  水という制限要因が農業の集約化を妨げる熱帯半乾燥地においては、人々はその生存を確保するために様々な形での「環境」への適応をせまられる。タンザニアと東北タイという二つの事例を比較検討することを通じて、熱帯半乾燥地における生存基盤の指数化に関する議論を行いたい。

 

【活動の記録】
舟橋教授より、東北タイのドンデーン村における生業活動の展開について報告を頂いた。ドンデーン村の周辺は、年変動が極端に大きく、短期間に集中的な降雨 があることで知られている。同村の人びとは、豊富な未開拓地が存在した1960年代頃までは、開拓移住によって「良田」を確保し、そこで多様な品種を栽培 することで、米の収穫量の増大と不安定性の軽減を図ってきた。これに対して未開拓地が消滅した1970年代以降は、都市への出稼ぎ労働によって現金収入の 安定が図られるようになった。この過程で、稲作はより高投入・高収量を指向するようになり、灌漑の導入が旱魃の被害を減らしたものの、洪水に対する脆弱性 は増大した。また同村の人びとの価値観がストック(良田)重視からフロー(現金収入)重視へと変化したのみならず、相続慣行や社会保障、ジェンダー関係に も変化が見られた。

 続いて伊谷准教授より、タンザニアの幾つかの地域の事例をもとに、降雨の不安定な地域における多様な作物と農法の展開について報告を頂いた。これ ら地域の人びとは、トウモロコシ、シコクビエ、イネなど多様な作物を組み合わせることで、不規則な降雨に対処している。またそこでは、焼畑の一種であるチ テメネ農法や、土壌侵食を防止し、有機肥料の確保するためのマテンゴ・ピット農法、有機物の分解を促すマウンド農法など、さまざまな農法が展開されてい る。アフリカの農業は、在来農業から近代農業へ、粗放的な農法から集約的な農法へと直線的に変化してゆくのではなく、人びとは生態的・社会的な状況に応じ て、「集約化」の程度が異なる様々な農法を創出し、それを幾つも組み合わせて展開することにより、生計の維持を図っている。

 これら報告を受けてフロアからは、伊谷准教授の提示した事例は、生命圏的な多様性をさらに多様化させる農法の展開という意味で、いわば「生命圏的 農業」と呼べるのではないか、これに対して舟橋教授の示したドンデーン村の事例は、安定性を追求する「地球圏的農業」であると言えるのではないかという指 摘があった。また経済学の文脈では通常、労働集約か土地集約かという判断をするのだが、アフリカにおける在来農業の集約化は、そうした判断基準だけでは理 解できないような、特定の環境制約に対する適応の過程を含んでいるのはないかというコメントがあった。

(文責 西 真如)