日 時:2010年8月19日(木)14:00~
場 所:京都大学 稲盛財団記念館307号室
今回は、J.C.スコットの「モーラル・エコノミー―東南アジアの農民叛乱と生存維持―」(The Moral Economy of the Peasant:Rebellion and Subsistence in Southeast Asia)を取り上げます。
本書では、不確実な農業生産のもとで営まれる農民の社会的経済的営為が、共に生きることを志向した「生存維持の倫理」として説明されています。
これまでに取り上げたポランニーやサーリンズの論にかこつけるならば、互酬や再分配という社会統合の原則が、生計の維持という文脈においてどのような意味をもち、機能しているのかを本書は問題にしていると、捉えられるのではないかと思います。
また、生計維持の手段、すなわちここでいう農業生産の過程には、生態的・社会的・経済的要素が含まれていますが、本書ではそれらが経済主体である農民自らの「技術選択」や「制度、社会関係における正義や平等の概念」として示されています。
社会における生計維持の在り方を、人と人との共的関係として幅広く考察した本書は、アフリカ農村の生業に関する人類学・経済学的な研究に対してのみならず、自然資源の利用(技術、アクセス、所有-利用関係、制度、交渉、暗黙的了解)に関する研究にも大きな示唆を与えてくれるのではないかという期待から、個人的には本書を参考にしたいと考えています。
モラル・エコノミーは、ポリティカル・エコノミーなどの立場から批判され、論争も繰り広げられてきましたが、この勉強会ではその点も考慮しつつ、読み進めていきたいと考えています。
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※レジメは、序章-3章を平井、4-6章を八塚、7章および批判・論争について藤岡が担当。
※事前に読んできてください。
主催・連絡:平井將公・藤岡悠一郎・山本佳奈