第4回CIAS談話会
日 時:10月26日(火) 13:30~15:00
場 所:地域研究統合情報センター2階セミナー室(稲盛財団記念館2階213号室)
発表者:増原善之(京都大学地域研究統合情報センター研究員)
題目:「東南アジア大陸部北方地域:内陸交易国家から半・港市国家へ――16世紀におけるラオス・ランサン王国の遷都をめぐって」
(発表60分+質疑応答30分)
発表要旨:14世紀半ば、ラオス北部のルアンパバーンを中心に成立したランサン王国は、中国雲南地方を始めとする「北方内陸地域」と密接な経済的関係を有しながら、「内陸交易国家」として成長したと考えられる。しかし、16世紀に入ると、同王国をめぐる経済的環境は大きく様変わりする。すなわち、東南アジアにおける国際海洋交易が未曽有の発展を遂げた「交易の時代」の波がこの内陸国家にも及ぶようになり、アユタヤおよびカンボジアを始めとする港市国家が、希少な金属や森林物産を求めて、ランサン王国を含む内陸地域に対して経済的影響力を伸ばし始めたのである。このような「南方海洋地域」の動きに呼応して、ランサン王国の勢力圏も徐々に南東方向へと拡大し、現在のタイ国東北地方北部一帯にまで達したと考えられる。16世紀半ばのルアンパバーンからラオス中部のビエンチャンへの遷都は、ランサン王国の主要交易パートナーが「北方内陸地域」から「南方海洋地域」へと変化し、同王国の経済活動の中心が南方向へシフトしたことを物語っている。その意味で、同王国にとっての16世紀とは、「内陸交易国家」から「半・港市国家(沿岸部に位置していないにもかかわらず、国際海洋交易と密接に結びついた国家)」への移行期であったと位置づけられる。
(なお、本発表は現在執筆中の学位論文『14世紀から17世紀におけるラオス・ランサン王国経済史――「内陸交易国家」から「半・港市国家」へ(仮題)』の中の1つの章を中心に構成されています)
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