日 時:2010年11月1日(月) 14:00-16:00
場 所:京都大学東南アジア研究所 稲盛小会議室Ⅱ
タイトル:「カンボジア農村における子と高齢者の世帯間移動の互助機能」
発表者:
佐藤奈穂(東南アジア研究所研究員)
要旨:
カンボジア農村に相互扶助慣行は存在するものの,いずれも何らかの目的に特化したものか,期間が限られたものであり,日常的に人々の生活を支える 性格ではないのが特徴である。こうした状況を踏まえ,先行研究では,カンボジアの農村社会に互助メカニズムがなく,農民は個人主義的だという議論 を進め,互助機能が弱いことを強調している。カンボジア北西部の調査村では,農作業や他の経済活動において親子関係であっても,独立した世帯間で共同関係が観察されることは稀である。しか し,子や高齢者のケア労働では,親族の間で子や高齢者を世帯から世帯へ移動させることにより「チュオイ=支援」が行われていた。
生産活動や金銭,モノの賃借・贈与関係から見ればカンボジア農村は個人主義的であり互助機能が弱いとも言える。しかし,子や高齢者のケアに目を向 けると,世帯を超えた親族ネットワークの広がりが見えてくるのである。
平井將公
内線7815