日 時:2010年12月3日(金)
場 所:京都大学稲盛財団記念館 中会議室(332号室)
【主旨】
近年,中国における環境問題やその政策が取り沙汰されています。しかしながら,これらの課題は地域の経済開発や民族問題とも密接に関連しているため,批判的な立場の研究や,海外の研究者による調査が難しく,その報告に関しても限られた側面のみが報告される傾向がありました。そのなかで,本研究会では,中国政府による環境政策に関して,現地調査を主体とした研究をおこなってこられた国内外の研究者をお招きして,中国における環境問題や環境政策に関する実情とともに,地域の人びとがそれらの政策によってどのような影響を受けているのかを報告して頂きます。なお,発表は日本語でおこなう予定です。
【プログラム】
14:00 挨拶:王柳蘭(日本学術振興会RPD,京都大学CIAS)
14:10-14:50 別所裕介(広島大学・平和構築連携融合事業(HiPeC) 研究員)
「チベット東縁部・黄河源流域の生態移民と民俗文化の行方」
*生態移民とは,中国における開発や公害,環境保全政策に関連して,住民がこれまで生活してきた地域における土地や資源を利用できなくなり,生活地域の移動とそれにともなう生業変化などを求められている状況を指す。
14:50-15:30 児玉香菜子 (千葉大学文学部日本文化学科・助教)
「内モンゴル西部・黒河流域の生態移民と牧畜文化の行方」
本発表の目的は内モンゴル西部黒河下流域の「生態移民」の事例から,政策における生業観の相違,政策維持を支える政治構造を明らかにすることである。こうした構造に支えられ,今なお継続されている生態移民政策が牧畜文化および地域社会へ及ぼす影響と問題点を考察する。
15:30-15:45 ブレイク
15:5-16:25 張玉林(南京大学社会学系・教授)
「生態・環境災難の社会的分配と社会応対:中国山西省を中心に」
中国式の工業化による生態破壊と環境汚染は,はるかに「危機」のレベルを超え,実質的には自然に対する全面戦争として現れている。そのもっとも激しい戦場は,中国の「能源重化工基地」山西省である。本報告は,山西の生態環境災難とその地理・社会空間での分布状況,農村社会に対する影響,およびそれへの対応の仕方と問題点を詳細に考察することにある。
16:25-17:05 山田勇(京都大学・名誉教授)
「中国辺境域とアジア海域での生態資源利用の変遷に関わる中国人の役割」
1990年から2010年にかけてのチベット,雲南および四川の辺境域における生態資源利用の変遷を追い,そこでの少数民族と漢民族の姿勢の違いについてまず述べる。つぎに,アジア海域世界のなかで,沈香や南海産物に関与する中国人の生活とネットワークに関しての調査結果を踏まえ,市場開放後の中国の動きがいかに辺境域を攪乱してきたかをあとづける。そして,こういった現状にも関わらず伝統的生活様式を守り続ける人々の動きについてまとめる。
17:05-17:20 ブレイク
総合討論 17:20-18:30
主 催:
京都大学地域研究統合情報センター複合共同研究ユニット「自然と人の相互作用からみた歴史的地域の生成」
共 催:
京都大学GCOE「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」イニシアティブ2班「人と自然の共生研究」