日 時:2011年4月15日(金) 16:00~18:00
場 所:京都大学東南アジア研究所 稲盛財団記念館3階 中会議室
題目: 『ブラジルアマゾンの土地なし農民の生活への生産とcommon goodsの影響』
話題提供者: 石丸 香苗氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
【発表要旨】
ブラジルにおける土地なし農民運動は、1988年憲法186条の一文である「すべての土地は生産活動に利用されなければならない」を逆手にとり、土地を持たない農民達(センテーハ=landless
peasant)が放棄耕作地・牧地に侵入・占拠し、生産活動を行うことによって土地の所有権取得を求める活動である。背景には、5%の土地所有者が耕作可能地の70%以上を所有する土地分配の不均衡や(Renner
1997)、世界三位といわれる経済格差 (UNDP2010)、総人口の1/3が貧困層向けの援助(bolsa
familia)を受けている現状が存在する。
運動はブラジル全土に広がり、特に地方では耕作可能な土地を得やすいことからアグロフォレストリや有機農法の試みを取り入れた積極的な生産活動を行うコミュニティが多く認められる(Kondo
2005)。こういった地方の土地なし農民コミュニティはインバゾン(侵入者)と呼ばれ、ブラジル国内では森林破壊の元凶や不法占拠の脅威、また度々暴力と犯罪の源というバイアスを受けると同時に、世界的には国家の最貧困層が自ら生産環境を手に入れ生存のための礎を築く社会運動として一定の評価を受けている。
豊富な森林資源を持つブラジル北部のアマゾン地帯では、慣習的に食料としての果樹、建材としての木材、上質な水源や多くの薬用植物は、誰もが利用可能なcommon
goodsである。法廷賃金の半分以下で生活をする極度の貧困層が全人口の3割を占めるブラジルの中でも、ブラジル北部地域は特に貧しい地域であるが、アマゾン地帯の貧困層が現金収入に頼らず生活を維持する仕組みにはこれらcommon
goodsの寄与が大きいと考えられる。
ブラジル北部アマゾンの森林に侵入した土地なし農民の生活には、これら「占拠した土地での生産」と「近隣の自然からのcommon
goods」の両方が大いに関係していると考えられる。昨年の調査では、生産とコモンによる土地なし農民の生活の改善状況を調べることを目的に、アマゾン河口部ベレン近郊のサンタバーバラ郡にある、居住年数の異なる二つの生産活動の活発な土地なし農民コロニーを対象として家計調査、生産物調査を行った。今回はブラジルアマゾンの二次林に進入した土地なし農民の生活の紹介と簡単な調査結果報告を行う。
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