日時: 2011年5月14日(土) 13:30~17:30
場所: 京都大学稲盛財団記念館中会議室 (http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/
報告1: 竹口美久(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程)
「タイにおける外国人労働者受容の制度的変遷-「半合法」範疇をめぐる今日的課題」
報告2: 浜元聡子(京都大学東南アジア研究所・研究員)
「被災コミュニティ復興の〈場〉を考える- 南スラウェシとジャワの事例から」
●竹口 報告要旨
1990年代に高度経済成長期を迎えたタイには、近隣のカンボジア・ラオス・ミャンマー(CLM諸国)から多くの労働者が流入し、タイ人がもはや担わなくなった非熟練・低賃金部門に就業した。政府は1992年にCLM諸国労働者登録制度を創設し、不法入国・不法滞在者であっても所定の登録手続きを行った者に限って就労を認めた。これによって、入国は不法でも滞在及び就労は合法である「半合法」労働者が誕生した。以来、当該登録制度は少しずつ見直されながらも現在まで踏襲されている。制度創設から20年が過ぎ、タイ経済はCLM諸国労働者なしには立ち行かなくなる一方で、不法労働者が後を絶たない。そこで政府は「半合法」範疇の一掃を目指した新制度を構築し、2010年にその運用を開始した。1992年来の制度変遷の整理・考察を踏まえて新制度を位置づけ、その実効性や影響を展望する。
●浜元 報告要旨
南スラウェシ州レンケセ集落は、バワカラエン山山頂カルデラ壁崩落(2004年)により、生存基盤におおきな被害を受けた住民が、県が用意した再定住村への移住案を受け入れた一方で、先祖伝来の土地での復興を目指し被災地に残る選択をした住民がいた。ジョグジャカルタ特別州のニュー・ンレペン集落は、ジャワ島中部地震(2006年)の影響で発生した地滑りの被害を受けた複数の集落が集まってできたコミュニティである。分離と再統合を経験したふたつの被災コミュニティは、外部支援者とのかかわりの場としてまとまりながら、緩やかに復興に向かってきた。本報告では3つの事例を紹介しながら、被災した場所と再定住村におけるコミュニティ復興の差異と、不特定多数の外部支援者の役割について考える。
東南アジア学会
関西地区担当 山本博之
yama[at]cias.kyoto-u.ac.jp