イニシアティブ1は、人類が技術と制度の発展をつうじてアジア・アフリカ地域の環境に与えてきた影響を歴史的にたどることによって、将来の技術・制度変化の方向を探る。われわれの研究対象とする(東アジアを除く)アジア、アフリカ地域の多くは熱帯に位置しており、その環境上の特徴が温帯のそれと大きく異なることは言うまでもない。にもかかわらず、この地域の経済社会の発展は、歴史的には植民地支配と西洋列強がもたらした技術や制度によって大きな影響を受けてきた。熱帯の環境に即した技術や制度が、温帯と同じような密度で長期的に形成されてきたわけではないのである。
だが、地球環境を、地球が太陽から吸収するエネルギーの量、生物の活動における変化の速度と多様性、物質・エネルギー循環の勢いなどの指標で考えると、そのダイナミクスの中心は温帯ではなく熱帯であることは明白である。しかも、今後100年のあいだは、少なくとも世界人口の過半が熱帯に住むことになるだろう。それゆえわれわれは、将来の技術・制度変化の方向を見極めるために、熱帯を中心とした長期ダイナミクスの視点を確立する必要がある。
イニシアティブ1の主たる目的は、このような立場からの文理融合的な研究を蓄積することである。それに関連して、熱帯の環境や社会に関するいくつかの指標を作るのに参考となるデータを蓄積する「生存基盤データベース」を構築する。また、それらから得られる自然・社会指標を融合した「地域サステイナビリティー指標」を作成し、ローカル、リージョナルな持続性の長期趨勢を見る一助としたい。
(イニシアティブ1 リーダー 杉原薫)
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