研究概要
研究テーマ: 「牧畜民サンブルの身体装飾と年齢体系に関する人類学的研究」
東アフリカの牧畜民サンブルの身体装飾と年齢体系の変容に関する人類学的研究
本研究は、東アフリカ・ケニア共和国の牧畜民サンブルを対象に、この社会の主要な統合原理のひとつである年齢体系の動態・変遷を身体装飾の変化を材料としながら実証的に解明することを目的とする。
サンブルの年齢体系では、男性は結婚と割礼によって「少年(生後~割礼)」「モラン(戦士)(割礼~結婚)」「長老(結婚~)」という三つの階梯に分けられるが、本研究ではとくに「モラン」という独特の存在に注目する。サンブルにおいて装身具は個人の社会的な地位や儀礼的な状況を表示し、その授受は社会関係を構築する役割を果たしてきた。なかでもモランは、ビーズを多用した装身具で身を飾っているが、近年、その装身具の種類は急増し、「装飾性」を増している。
装身具にみられるこうした変化を、学校教育・出稼ぎ・観光産業・市場経済といった現代的な状況との関連において考察するとともに、急速に変化する社会環境のもとでモランの新しい経験が年齢体系をどのように変化させていくのかを総合的に分析する。
平成15年度COEフィールドワーク報告へ
平成14年度COEフィールドワーク報告へ
主な業績:
■著書
- 2005. Adornments of the Samburu in Northern Kenya: A Comprehensive List. The Center for African Area Studies, Kyoto University.
■論文
- 2008年 『ケニア・サンブル社会における年齢体系の変容動態に関する研究-青年期にみられる集団性とその個人化に注目して-』京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士論文.
- 2007年「牧畜民サンブルの「フェイク」と「オリジナル」:「観光の文脈」の誕生」『アジア・アフリカ地域研究』No. 6(2): 559-578.
- 2006年 Social changes in the moranhood of the Samburu age system: Individual circumcision and irregular marriage. In (X. Sun and Naoki Naito, eds.) Mobility, Flexibility, and Potential of Nomadic Pastoralism in Eurasia and Africa. ASAFAS Special Paper No.10., pp. 119-130. ASAFAS, Kyoto University.
- 2004年 「『産まない性』-サンブルの未婚の青年層によるビーズの授受を介した恋人関係」田中二郎・佐藤俊・菅原和孝・太田至編『遊動民(ノマッド)』 昭和堂, pp.412-438.
- 2003年「牧畜民サンブルの『戦士』の旅-観光地への出稼ぎと装身具をめぐる新しい経験-」『旅の文化研究所研究報告』12:109-131, 旅の文化研究所.
- 2002年 「ケニア・サンブル社会における年齢体系にうめこまれた『インセスト的』な性関係」『日本=性研究会議会報』14(1):43-56, 日本性教育協会.
- 2002年「おカネはミルク、おカネは水-牧畜民サンブルのレトリック-」小馬徹(編)『くらしの文化人類学5・カネと人生』雄山閣, pp.24-46.
- 2002.年「ビーズの恋人-ケニア・サンブル社会における未婚の男女の性関係と社会変容-」『アフリカレポート』35:15-20,アジア経済研究所.
- 2001年 「進化するビーズ装飾-ケニア・サンブル社会におけるモランの変容-」『アフリカレポート』33:32-36,アジア経済研究所.
- 2000年 『北ケニアの牧畜民サンブルの身体装飾と年齢体系:サブカルチャーとしての戦士とビーズ』京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士予備論文.
<エッセイなど>
- 中村香子. 2004. 「戦士の『情報技術』」『まほら』No.41, pp42-43, 旅の文化研究所.
- 中村香子. 2000. 「ことばは楽しい9・スワヒリ語 Habari? Nzuri! 『どう?』『元気です!』」『国際文化フォーラム通信』No.47, pp.8-9.
■口頭発表
- 2008年「『観光の文脈』と『本来の文脈』―ケニア・サンブルの観光地への出稼ぎの事例より―」日本文化人類学会第42回研究大会(京都大学, 2008年5月31日・6月1日)
- 2008年「『モランをやる』『モランをやめる』―ケニア・サンブル社会における若者の割礼・結婚の個人化傾向と年齢体系の変容―」日本アフリカ学会第45回学術大会(龍谷大学, 2008年5月24日-25日)
- 2008. “How do “Maasai warriors” encounter curiosity-seeking tourists? One aspect of globalization experienced by the Samburu, Kenya”. 92nd RISH Symposium, Towards Establishment of Sustainable Humanosphere, RISH (Research Institute for Sustainable Humanosphere, Kyoto University) Satellite Office (February 23, 2008, Cibinong, Indonesia).
- 2007年「牧畜民サンブルの『フェイク』と『オリジナル』―「観光の文脈」の誕生」「アフリカ牧畜社会におけるローカル・プラクティスの復権/活用による開発研究の地平」第一回研究会(京都大学, 2007年6月26日)
- 2007年コメンテイター, 京都人類学研究会6月例会. 演者:橋本和也氏(京都文教大学)演題:「『地域文化観光』と『地域性』-『真正性』の議論を超えて―」(京都大学, 2007年6月22日)
- 2006. (Poster presentation) “Social Changes in the Moranhood of the Samburu Age System: Individual Circumcision and Irregular Marriage”. Kyoto Symposium of 21st Century COE Program, Crossing Disciplinary Boundaries and Re-visioning Area Studies: Perspectives from Asia and Africa, ASAFAS & CSEAS, Kyoto University (November 9-13, 2006, Kyoto).
- 2006. Closing Remarks. Satellite Workshop on "Mobility, Flexibility, and Potential of Nomadic Pastoralism in Eurasia and Africa," at the Kyoto Symposium of 21st Century COE Program, ASAFAS & CSEAS, Kyoto University (November 13, 2006, Kyoto).
- 2006年「サンブルの年齢体系の変容:割礼と結婚の『個人化』という傾向の分析から」東アフリカ牧畜社会の比較研究会(佐賀県藤津郡太良町, 2006年3月19日-20日)
- 2004年「無心する側の論理」『特別フォーラム「無心の壁―アフリカ人の個人的援助要請とのしのぎあい;その意味を探ろう」』第41回日本アフリカ学会学術大会(中部大学)
- 2003 年 “Report of Lmuget la Laigoni Ceremony of the Samburu”. Nairobi Field Station Seminar, Comparative Study of the East African Age Systems. (September 2003, Nairobi).
- 2003年「牧畜民サンブルの『戦士』の旅-観光地への出稼ぎと社会変容に関する人類学的研究-」第9回旅の文化研究フォーラム(東京,2003年4月5日)
- 2002年“’Lovers of Beads’: The Unmarried Sexuality of the Samburu” Lake Biwa Seminar. (June 23-24, 2002, Otsu).
- 2002年「『インセスト的』な性関係に関する人類学的研究:東アフリカの牧畜民サンブル社会におけるセクシュアリティの分析から」第42回日本=性研究会議(東京,2002年6月15日)
- 2002年「サンブル社会におけるモラン(戦士)の「クラブ」:モランと未婚/既婚女性との性関係から社会変容をみる」第39回日本アフリカ学会学術大会(東北大学,2002年5月25日-26日)
- 2001年「北ケニアの牧畜民サンブルのモラン(戦士)と「擬似結婚」:年齢体系の変容との関わりにおいて」第38回日本アフリカ学会学術大会(名古屋大学,2001年5月26日−27日)
- 2000年「北ケニアの牧畜民サンブルの身体装飾と年齢体系:サブカルチャーとしての戦士とビーズ」第5回生態人類学会学術大会(山口,2000年3月19日-20日)
サイト管理者はコメントに関する責任を負いません。