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「経済史から見た生存基盤持続型径路の展開-環境と制度の関わり-」 [ 第3回研究会 ] (G-COEパラダイム研究会)

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「経済史から見た生存基盤持続型径路の展開-環境と制度の関わり-」

日 時:2007年11月19日(月) 16:00~18:00
場 所:京都大学宇治キャンパス・総合研究実験棟 5F 生存研セミナー室1(HW525)

■プログラム  
4:00 4:30 杉原薫(東南アジア研究所) 
「資本主義の論理と環境の持続性-欧米、東アジア、熱帯の比較史から-」
4:30 5:00 脇村孝平(大阪市立大学大学院経済学研究科)
「19世紀南アジア災害論-飢饉・マラリア・コレラ」
5:00 5:10 休 憩
5:10 6:00 コメント・総合討論

 

発表者:1. 杉原薫(京大東南アジア研究所教授)
             『資本主義の論理と環境の持続性-欧米、東アジア、熱帯の比較史から』

         2. 脇村孝平(大阪市立大経済学研究科教授)
             『19世紀南アジア災害論-飢饉・マラリア・コレラ』  

【趣旨】
社会経済史からみた生存基盤持続型発展径路の展開について取り上げる。開発の中で環境がどのような変化を受け、それが地域の社会経済にどのような影響を与えたのかを歴史的に明らかにし、生存基盤持続型発展径路の今後の展開について考える。

 

【活動の記録】
1. 『資本主義の論理と環境の持続性-欧米、東アジア、熱帯の比較史から』 杉原薫

 人口増加と経済発展を成し遂げてきた歴史のなかで、地域の生存基盤はどのように確保されてきたか?そしてそこで生まれた知恵は、今後どのように生かせるか?本発表では、アジア経済史、グローバルヒストリーの研究を踏まえながら、上記のような問いを設定することでこれを持続型生存基盤研究へと繋げ、生存基盤のグローバルな普遍性、多様性を理解するための提案がなされた。

 まず世界経済の発展径路をヨーロッパ型(石炭や新大陸の資源に支えられた資本集約的・資源集約的な技術の発展径路への「偏向」)と東アジア型(「勤勉革命径路」)に分け、「資源の制約」における対照的な対応が論じられた。その上で、資本主義の論理と環境の持続性の問題がどう接合されるべきかが、経済発展径路の地域性を生む文化としての「物産複合」、地域の生命体の体系として維持されるべき「生命体複合」、そして生存圏として前者2つを規定する「物質・エネルギー循環」の3つの観点から考察された。そして、熱エネルギーや生物多様性において地球環境の中心的な位置にある熱帯地域を第3の考察地域として導入することの重要性が指摘された。

2. 『19世紀南アジア災害論-飢饉・マラリア・コレラ』 脇村孝平

 19世紀の南アジアでは、飢饉や疫病といった災害が頻発したが、これは必ずしもこの時代が「貧困」と「停滞」のみによって特徴付けられていたことを意味しない。本発表では、19世紀後半から20世紀前半の英領インド連合州における食糧生産、人口動態等の統計から、この時代が「停滞」の時代というよりは、むしろ一次産品の輸出を通じて経済が活発化した時代であったこと、しかし食糧生産の変動は大きく、旱魃時に下層カーストが雇用を喪失し、飢饉の被害者となっていったこと、また、マラリアやコレラといった疫病が同時に蔓延することで、死亡率がさらに高まったことが示された。そして、一次産品輸出による成長が、限界地の耕作などによる生態的な負荷や人の移動、都市化、環境改変などによる疾病環境の悪化を通じて下層階層に不安定性を突きつけ、その結果飢饉や疫病を惹起したという仮説が論じられ、その基層としてインドの生態的条件とそれに規定される社会構造の存在が指摘された。

(文責  生方史数)

参考文献:
・杉原薫 「東アジアにおける勤勉革命径路の成立」『大阪大学経済学』54巻3号、2004年12月、336-61頁.
・Sugihara, K., "Japan, China and the Growth of the Asian, International Economy, 1850-1949", Oxford University Press, Oxford, 2005. (OUP Scholarship Online に収録) href="http://www.oxfordscholarship.com/oso/public/index.html">http://www.oxfordscholarship.com/oso/public/index.html).
・Sugihara, K., "The Second Noel Butlin Lecture: Labour-Intensive, Industrialisation in Global History", Australian Economic History Review, Vol.47, No.2, July 2007, pp.121-54.
・杉原薫 『アジア間貿易の形成と構造』 ミネルヴァ書房、1996年.
・杉原薫 『アジア太平洋経済圏の興隆』 大阪大学出版会、2003年.
・脇村孝平 『飢饉・疫病・植民地統治-開発の中の英領インド』 名古屋大学出版会、2002年.
・脇村孝平 「健康の経済史とは何か-英領インドの飢饉・疫病と植民地開発(1871-1920)」『経済史研究』第7号、2003年.
・脇村孝平 「熱帯医学とマラリア研究-20世紀前半の英領インド」『歴史学研究』第781号、2003年.
・Pomeranz, Kenneth, The Great Divergence; China, Europe, and the Making of the Modern World Economy, Princeton University Press, Princeton, 2000.
・ケネス・ポメランツ 「比較経済史の再検討―東アジア型発展径路の歴史的、概念的、政策的含意―」(杉原薫・西村雄志訳)、『社会経済史学』68巻6号、2003年3月、13-27頁.
・Lewis, W. Arthur ed., Tropical Development 1880-1913, George Allen &Unwin, London, 1970.
・Maddison, Angus, Contours of the World Economy, 1-2030 AD: Essays in MacroEconomic History, Oxford University Press, Oxford, 2007.
・エリック・ジョーンズ 『ヨーロッパの奇跡―環境・経済・地政の比較史』(安元稔・脇村孝平訳)、名古屋大学出版会、2000年.

 

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