京都大学のよき伝統のひとつは、学問における実証性の重視です。そして、フィールドワークにもとづく現場主義をとおして独創的なパラダイムを探究してきたことは、よく知られています。私たちは、フィールドワークを教育・研究の核に据えて、現場における第一線の研究と教育活動を融合させながら推進することを、主要な目標としています。そのためには、教員と学生が一緒にアフリカの調査地にでかけてゆき、ともに現場で考えることが必要になります。フィールド・ステーション(FS)は、それを実現するための重要な装置となっています。
FSを活用した教育・研究の第一の利点は、大学院生と教員がフィールドワークの経験をインテンシブに共有することをとおして、具体例に即しながらともに学ぶところにあります。これを私たちは、on-site educationと呼んでいます。第二には、FSを利用して資料整理やセミナーをおこなうことによって研究の問題点を明確にし、その後のフィールドワークの方向を再定位することができます。第三に、FSを活用しながら現地の研究者・大学院生とのあいだの交流・討論を深めることも、複眼的な視点を養成するうえで重要です。
NFSは、2002年度から5年間実施した
21世紀COEプログラム「世界を先導する総合的地域研究拠点の形成」によって設立されました。そして2007年度からは、
グローバルCOEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」によって、この機能をさらに拡充しています。NFSは、ケニアとウガンダで調査をおこなう教員と大学院生が利用しており、
ナイロビ大学アフリカ研究所と
マケレレ大学社会科学部とをカウンターパートとする協力体制のもとで運営されています。またNFSの管理・運営のためには、
日本学術振興会ナイロビ研究連絡センターからも強力な支援を得ています。
具体的にはNFSは、ケニアの首都ナイロビにある小さなアパートに設置されており、インターネットを初めとする通信設備や辞書・事典類、机や椅子、本棚などを整備し、フィールドワークの準備や収集した資料の整理、セミナーの開催などができる環境をととのえています。ここで私たちは、寝食をともにしながら研究談義をしたり、現地の研究者や調査地の人びとを招待して交流を深めるなど、現地における調査研究を推進するために活用しています。
(文責:太田至)
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