研究の概要
テーマ:「 東アフリカ観光地域における「みやげ物絵画」の広域展開に関する文化人類学的研究 」
現在、アフリカの多くの国々において観光化が進んでおり、主として外国人観光客をターゲットとしたみやげ物業には多くの人々が参入するようになっている。従来、みやげ物をはじめとする観光に関する諸問題は、一つの観光地、もしくはその国家の問題としてとらえられることが多かった。しかし近年、特に「ティンガティンガ」に代表されるみやげ物絵画の制作・販売はケニア・タンザニアを中心とした多くの観光地において広くおこなわれており、商品となる絵画の流通のみならず、画家や客引きまでもが携帯電話を駆使したネットワークを形成することによって広い範囲を移動・往来しながら仕事をしている。ザンジバルにおけるみやげ物絵画「キス・マサイ」は、移動する人々のあいだで技術伝達がおこなわれたことによって新しいスタイルが創出された、ひとつの事例である。
現代アフリカ社会において、みやげ物絵画をはじめとしたみやげ物業に関わる人々の活動範囲や全体像は国家や行政区といった従来の「地域」概念を単位とした視点からでは把握しきれない複雑かつ動的な状況にあると考えられ、みやげ物絵画がつくられ・消費される背景には、このようなアフリカの観光化にともなう労働移動が大きくかかわっていることが予想される。そこで本研究では、みやげ物絵画というモノをめぐる人々の都市-都市間の労働移動や、近年の観光化や携帯電話の普及に起因するトランスナショナル/トランスローカルな移動現象の分析を通して、みやげ物絵画が誰によって/どのようにしてつくられ/売られているのか、その創出・制作・流通・消費の全体像を明らかにすることを目的としている。そしてまた、移動労働者としての観光業従事者を受け入れる地域社会は、どのように再編され、いかにして「観光地」として機能するに至っているのか、ひとつの地域社会が観光化してゆくプロセスについても検討してゆきたい。
キーワード: 観光化、移動・越境、アフリカン・アート、みやげ物
関心領域: アフリカ地域研究、文化人類学
調査地: タンザニア・ケニアの観光地(主にタンザニアのザンジバルが中心)
調査・渡航歴:
2005年8月~10月 ケニア(ナイロビ、コースト州)、タンザニア(ダル・エス・サラーム、ザンジバル)*博士予備論文執筆のための予備調査
2006年2月~9月 タンザニア(ザンジバル)*博士予備論文執筆のための現地調査
2008年2月~3月 ケニア(ナイロビ)*若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)による言語研修
2008年11月末~2009年6月末予定 ケニア・タンザニア *京都大学教育振興財団長期派遣助成による現地調査
2007『タンザニア・ザンジバル島における「土産物画家」に関する研究-新しい技法の創造と模倣のプロセス-』京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、博士予備論文 (修士論文相当)、2007年7月
2005『アフリカン・アートの語り方-タンザニア・ティンガティンガ画家の事例を題材に-』京都文教大学人間学部文化人類学科、卒業論文 、2005年3月
エッセイ:
「流れない水洗トイレ」服部志帆・丸山淳子ほか編『アフリカをめぐる10の物語り』NPOアフリック・アフリカ 、2008年5月
オンライン・エッセイ:
「『おまけ付き』の灯油」 、NPOアフリック・アフリカ アフリカ便り、特定非営利活動法人アフリック・アフリカ 、2008年10月
「『呪われる』ということ」 、NPOアフリック・アフリカ アフリカ便り、特定非営利活動法人アフリック・アフリカ、2008年7月
「ナイロビ・バス事情」、ナイロビ・フィールド・ステーション フィールドコラム、 2008年6月
「流れない水洗トイレ」 、NPOアフリック・アフリカ アフリカ便り、特定非営利活動法人アフリック・アフリカ、2008年4月
「真夜中の一分間」 、NPOアフリック・アフリカ アフリカ便り、特定非営利活動法人アフリック・アフリカ、2008年2月
「ザンジバルの「ホテリ」で食べる朝ごはん」 、NPOアフリック・アフリカ アフリカ便り、特定非営利活動法人アフリック・アフリカ、2007年12月
口頭発表:
「東アフリカ観光地域における「土産物絵画」の展開」『第2回「アジア・アフリカ地域におけるグローバル化の多元性に関する人類学的研究」共同研究プロジェクト研究会』、東京外国語大学、2008年10月
「移動する画家-東アフリカ・タンザニアにおける土産物絵画のつくり手たち-」『日本文化人類学会第42回研究大会』、京都大学、2008年5月
「ティンガティンガとキス・マサイ-ザンジバルにおける土産物絵画のつくり手たち-」『第157回学振セミナー』、日本学術振興会ナイロビ研究連絡センター、2008年3月
「「キス・マサイ」-タンザニア・ザンジバル島における土産物絵画づくりの一考察-」『アフリカセミナー特集第1回「アフリカのポピュラーカルチャー」』、京都大学、2007年6月
「土産物絵画」のつくり方-タンザニアのザンジバル島における新しい技法の創造と模倣のプロセス-」『日本アフリカ学会第44回研究大会』、長崎大学、2007年5月
「「土産物」をつくる-現代アフリカの観光化とアフリカン・アート-」『第5回ものづくり研究会』、京都大学、2006年11月
「タンザニアの絵画「ティンガティンガ」の現在-ザンジバルへ移動する画家たちの事例から-」『第27回現代アフリカ都市文化研究会』、名古屋大学、2006年1月
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